ここは「上海タワー」のコンベン
ションルーム。
胸の切込みが深い、ダークグレー
のスーツの長身美女。
周妮は、50人の研修生を前に。
「皆さんに、月収5万元を保障。
年収60万元です」
「だが、この中の10人は。
年収180万元も可能です」
「派遣先のJTBは、日本の最大
手の旅行会社。JTBは、中国
からの旅行客の、観光・宿泊・
運搬が仕事」
「皆さんの仕事は、旅行客の
財布の中の管理が仕事」
「つまり、旅先で財布のヒモを
緩めるのが、皆さまのスキル」
「顧客の心を掴み、この小瓶を
手に渡すだけで。いいのです」
「この小瓶は、中国四千年の歴史
が生んだ秘薬」
「健闘を、祈ります」
と、結んだ。
■
警察庁警備局と警視庁の二つの
組織の下に、それぞれ公安部
がある。
桜田門ビルの一室。
二つの「公安連絡会議」の議題は、
「C国関与による違法薬物売買
に関する捜査方針について」
厚生労働省・麻薬取締官が、
「C国からの来日旅行客が拡大
する中。不可解な事案が露見
されている」
「出国時、手荷物検査場で麻薬
探知犬が小瓶を発見」
「所持者は、『媚薬のサンプル』
と言っているが、中身は世界最
悪の麻薬『クロコダイル』」
「ご存知の如く、これは鎮痛剤の
コデインにガソリン、ペイント
希釈剤などを添加した、猛毒な
アヘン剤。ヘロインと類似した
高揚感を短時間で齎す薬物」
「どうやら、旅行中にサンプルを
試飲。帰国後に、定期購入する
システムらしい」
「所持者は、C国の富裕層。
ツアーガイドから貰ったと
言っている」
「代理店は、最大手のJ社」
警視庁公安部の管理官が発言。
「J社の本社は、品川区。
ここは、まず我らが探りを」
鬼頭が俣阿野を、神田のガード下
に誘った。
「またまた、君の出番だ。
上海の周妮に会えるかも」
と、ほくそ笑んだ。
「あの女とは、上海の豫園の
南翔饅頭店で小籠包を食べた
のが最後。もう、食傷気味」
と、言いながらも
「彼女、またも悪事を？」
と、興味津々の様子。
■
周妮との出会いは、
白木唯の痕跡を追ったイタリア。
ミラノ・グランデ運河沿いの、
の大邸宅。
最初の関係は、
映画「ベニスに死す』の舞台となった、
ベネツィアのリド島。
チャイナドレスのスリットから
伸びた長い脚が、明方まで絡んだ。
ベネツィアで別れ、
再会したのが北海道・小樽。
「北一硝子・ヴェネツィア美術館」
その後、二人は。
道東の知床・網走、屈斜路湖・
阿寒湖・摩周湖を巡った。
札幌・網走・知床で、共に朝を
迎えた。
一緒に帰京し、
そのまま、虎ノ門ヒルズ・レジデ
ンスに。
高層階の部屋に、招かれ。
「嘘でしょう」
「ここが、志隈さんの自宅？」
二人は、西麻布のフランス料理
店でディナー。
周妮は、深紅のチャイナドレス。
ワインを飲み過ぎたのか。
抱えられるようにして、戻った。
ドアを開けると、部屋が明るく。
人の気配が。
ソファーに、目を転じると。
京歌の姿が、飛び込んだ。
俣阿野志隈と吉本京歌が、
結婚を誓ったのは。
それから間もなくしての、
愛媛・道後温泉。
■
「東京プリンスホテル」
㈱マーケティング日本「MJ社」
白木香織、就任祝賀パーティー。
その中に、周妮の姿が。
肩書は、「㈱MJ上海支社首席」。
京歌が、傍に近づくと。
周妮が、
「ご主人様から、ご結婚ご懐妊
のこと。伺っています」
「おめでとうございます」
「日本のMJ社に入社の
縁を下さったのは、お二人。
感謝しておりますわ」
と、挨拶。
京歌は、
「貴女の実力を、香織さんも舞
さんも認めてのことよ」
「日本の組織の中でも、充分成
功するでしょうね。陰ながら、
応援しますわ」
と、応じた。
その後、
MJ上海支社の首席の地位を
悪用。
「違法薬物密売」で逮捕。
その事件の相棒が、
白木香織の元夫の白石栄一。
俣阿野と周妮の関係。
「切れては、繋がる」
「繋がっては、切れる」
不思議な因縁。
EPISODE V「器世界」
（おわり）
文脈的に、
「極めて中途半端感が満載」
なので。
続きをEPISODE Ⅵ に、
引き継ぐことに。
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■主な登場人物（適宜掲載）
▶俣阿野志隈 私立探偵・極秘諜報員
▶浜まり 弁護士・極秘諜報員
▶俣阿野京歌 志隈の妻・極秘諜報員
▶白木唯 映像クリエイター・極秘諜報員
▶白石香織 旧姓白木香織・唯の異母姉妹
▶浜智之 まりの夫・寺の住職
▶深川舞 ㈱マーケティング日本・事業部長
▶周妮元MJ上海首席・元ルポライター
■本作は、フィクション作品。
登場する地域・人物・組織等の名称及び
写真イラスト等は現存のものと無関係。
諸制度や時代考証などの齟齬は、ご容赦。
■添削・校正なしでの配信。
誤字脱字の程、ご容赦。
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