2023.4.26 新曲 発売 市川由紀乃
シンガポールのランドマーク。
それは、「マリーナベイサンズ」
高層タワービル３錬が、57階の
「空中庭園とインフィニティプール」
で繋がる、五つ星ホテル。
三日後に、このホテルのコンベ
ンションホールで。
近年注目のオークションハウス
「ウエストオークションズ」が
骨董美術品のオークションを
開催する。
同オークションハウスは、
表面上は日本企業だが、陰の
オーナーは「かの国人」の噂も。
実態は定かでは無い。
浜まりと白木唯は、
先乗りで、同ホテルに投宿。
部屋には、荷物が届いていた。
それは、
Amazonで買い求め、この
ホテル宛に送っておいた、
「伊万里焼の中皿、１０皿」。
総額、３万5千円。
空輸料金の方が高い。
唯は、
包装箱から中皿を取り出して。
持参の、油紙で無造作に包直し。
その上に、
「古伊万里焼」と書かれたカード
と上海で手に入れた「鑑定書」を
貼り付け。
クッション材を挟んで、
スーツケースに収めた。
これで、準備万端。
まりと唯は、水着に着替え。
屋上のインフィニティプールへ。
◆
佐賀の湯処「武雄温泉」に着いた
俣阿野夫妻。
老舗の温泉宿「京楼」を訪ねた。
宿の主人には、既に手筈が付いて
いる。
つまり、
「昨今の、政治家を狙った狙撃事
件の対応として。たとえプライ
ベートであれ、大物政治家が絡
む会合は。当事者に内密で事前
に不審物等のチェックを実施
する」
と言う内容。
これは、
「俣阿野―鬼頭―警察庁長官―
佐賀県警本部長―武雄警察署
長―宿の主人」
のルートで、伝達された。
俣阿野と京歌は、宿の主人に。
「たとえ、政治家の身を守るため
とは言え。内密を望む顧客に対
し、警察の行動を事前に漏らし
ては。そちらの商売に不利益。
よって、我々も夫婦を装って
来ている」
「危険を察知する為、防犯カメラ
等を設置するが。これは部屋の
利用客には決して話さぬよう」
と、釘を刺した。
「京楼」の主人は、俣阿野夫妻を
ある部屋に案内した。
その部屋は、「二日後の宴席」
の為に予約された「躑躅の間」。
俣阿野が得ている情報では。
予約したのは、
東京都内に本社がある
大手総合デベロッパーの幹部。
ここで、
保守系の大物議員「W」と
国土交通省の官僚を招き。
ある「密約」が交わされる。
らしいのだ。
俣阿野が部屋に設置した
「AI盗聴器」は。
内閣官房・国家安全保障局の外郭
組織の「情報戦略機器研究所」と、
警察庁及び警視庁共同の「情報解
析機器研究所」の、両研究所が
合同で開発した世界最高レベル
の「AI盗聴器」。
想像を超える「超小型超高性能」
俣阿野は、宿の主人に。
「部屋の中を、隈なく探したが。
不審な物は何も無かった」
「当日は、あの部屋を使用される
政治家にも他のお客さまにも。
決して気付かれないように。
警護の警官を配置するので、
ご安心を」
「呉呉も、関係者には内密に。
宿や利用客に迷惑を、お掛けし
ないのが。我々、警察の使命」
と伝えた。
二日後の夜。
武雄温泉宿「京楼・躑躅の間」
から、驚愕の事実と謀略が発覚し
たのだった。
◆
コンベンションホールで、
「骨董品オークション」が、
始まった。
骨董品とは、
造られてから凡そ百年以上の、
工芸品や美術品のこと。
今回は、主に日本の古美術品。
「江戸時代から明治、大正、戦前
の昭和の時代に。日本から、
海外に持出された品」
これが、コンセプト。
まりと唯は、
１皿3千５百円で購入した
「伊万里焼の中皿」に。
「中日美術品鑑定協会/王白石」
の署名入りの「鑑定書」を添付。
３百５0万円の値を付け。
「古伊万里焼」」として、
10皿合計３千５百万円で出品。
オークションは、
１千万円からスタート。
数分で、
リザーブプライスを突破。
その３分後、
5千万円で、落札された。
落札したのは、
かの国の「ヤング大富豪・王王」
三十代前半のIT企業の創業者。
王王は、オンラインで参加。
ウエストオークションズのVIP。
今年に入ってから、
日本の古美術品だけで既に。
百億円以上も買い占めている。
オークション終了後、コンベン
ションホールは。
ハウス主催の、感謝パーティー
会場に早変わり。
このパーティー。
毎回、凝らした趣向。
飲食は、ビュッフェスタイル。
部屋の１/３にステージ。
今夜のゲストは、
かの国のアイドルグループ
「少年時代」。
メンバー７人の平均年齢14歳。
噂では聞いていたが、かの国の
「アイドルグループの実力」
パーティーに参加したまりと唯。
余りのレベルの高さにビックリ。
19時を回ったころ、
ステージのショーは佳境を
迎えていた。
突然、会場のドアの一つから
「FAKE、FAKE」
と、大声を発しながら男が乱入。
ステージのマイクを奪い、
英語と中国語で、騒ぎ立てた。
男の手には、
直径20㎝程の中皿と鑑定書
らしき紙切れ。
男の話を翻訳すれば、
「先刻オークションで落札した
古伊万里焼の中皿、鑑定書と
もに全て偽物」
「規定に基づき、ハウス側に
返金と違反料を請求する」
と言うもの。
男の名は、ラインで落札した
かの国のIT富豪「王王」。
近年、急速に頭角を現した、
ウエストオークションズ。
「最大のウリが、この規定」
つまり、
「偽物を扱った場合の一斉の
責任はハウス側。落札額と違反
料を、落札者に支払う」
と言う内容。
◆
翌朝、シンガポールの。
「ストレーツタイムス」代表紙
「ニューペーパー」スポーツ芸能紙
「ビジネスタイムス」経済紙
「トウデイ」無料新聞
「CANチャンネル」ニュースアジア
「チャンネル５」英語総合局
「チャンネル８」中国語総合局
全てのマスコミが、
「オークションハウスの不祥事」
を、大々的に報道した。
そして、全てが。
「事件の元凶は中日美術品鑑定
協会/王白石にある」
と、報じた。
（つづく）
◇◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇
■主な登場人物（適宜掲載）。
▶俣阿野志隈。私立探偵。極秘諜報員。
▶浜まり。弁護士。ヤメ検。裏検。
▶京歌。極秘諜報員。志隈の妻。
▶白木唯。映像クリエイター。極秘諜報員。
▶鬼頭史郎。警視庁公安部/肩書不詳。
▶浜智之。まりの夫。寺の住職。
▶王白石。中日美術品鑑定協会・鑑定師。
▶王王。若手の大富豪。IT企業の創始者。
■本作品は、フィクション作品。
登場する、地域・人物・組織等の名称及び
写真・イラスト等は現存のものと無関係。
法規制度や時代考証などの齟齬は、容赦。
■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字
の程ご容赦を。
〈鰯の頭〉
◇◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇
