2023.4.26 新曲 発売 市川由紀乃

 

 

音楽には、ほぼ関心が無かった

(また)阿野(あの)だったが。

立て続けに、「楽器」が絡む事柄

に関わった。

 

SMKY(スモック)皆で、食事をしたとき。

年下の白木(しらき)(ゆい)が、

私たち、ちょうど四人。

 弦楽四重奏に挑戦しましょう

と、提案。

 

京歌(きょうか)が、

芸術は、鑑賞だけでは意味が

ない。体験することに意味が

と。

ワインで、盛り上がったせいで。

何故か、全員が賛同した。

 

 

練習場所は、虎ノ門の俣阿野宅。

あのマンションなら、音が外に

 漏れる心配はない

と、唯の一言で決定。

 

ところで、皆さん経験は?

と唯が改めて(たず)ねると。

 

(はま)まり(M)が、

バイオリンを6歳から9歳ま

で。10歳からは、学習塾が忙

しく辞めたわ

 

京歌(K)が、

私は9歳から2年間、バイオ

リン。才能が無いので辞めた

 

(Y)が、

私は、姉と一緒に小学校の6年

間。バイオリンとピアノ

ところで、ボスは?

(  S)が、

私?私は打楽器(だがっき)を少々。小学

 2年の時、学芸会で()が張って

いないタンバリンを

と。

 

ボス以外は、大丈夫そうね。

 じゃあ、まりさんと京歌さんは

 バイオリン。私がヴィオラ。

 ボスがチェロ

 

楽器は私が、中古品で全部揃え

ます。ボス30万円出してネ

と、唯が決めてしまった。

 

 

1週間後、虎ノ門ヒルズレジデン

シャルタワーの高層階

俣阿野の自宅マンションへ、4

所から荷物が届いた。

バイオリンが2ヶ所から。

ヴィオラとチェロも別々から。

 

唯がヤフオク(ヤフーオークション)落札した品。

バイオリン中古品/ドイツ製14万円。

バイオリン中古品/日本製7万円。

ヴィオラ中古品/日本製3万円。

チェロ中古品/韓国製6万円。

どれも弓なし〆て30万円也

 

 

 

唯から招集メールが届いた。

楽器が(そろ)いました

どれもキズが多少あるけど。

 新品なら、安く見積もっても。

全部で、5百万円はする品

三日後、正午に俣阿野宅集合。

弓は各自購入し持参されたし

 

蛇足(だそく)ながら。(さつ)弦楽器(げんがっき)は弓が

 大事。先般の、ストラディバリ

ウス紛失事件。音色が違ったの

は、女子学生Aが自分の弓で

弾いてしまったから。これが、

あの事件の真相

と、書いてあった。

 

 

三日後の正午。

約束通り、SMKYが集合。

成り行きか、暗黙の了解か。

バンドマスターは唯って感じ。

 

予定通り、各自が弓を持参

まりは、自分が小学生の頃に使っ

ていたものを探し出し持参。

 

京歌は、お茶の水の楽器店で7万

円で買ったものを持参。従って、

本体と弓の値段が同じに。

 

は、自分のヴィオラ用に1万円。

ボスのチェロ用にも1万円のも

のを買って持参。

 

バンド名「SMKY(スモック)カルテット

で即決した。

担当は、

(M)が、stバイ(メロディー)オリン(高いパート)

(K)が、st(内声)イオリン( 低いパート)

(Y)が、ヴィオラ(内声 ハーモニー)

(S)が、チェロ(伴奏 低音部)

 

練習曲に選んだのは、無謀(むぼう)にも。

ハイドン弦楽四重奏第77番・皇帝

 

 

問題なのは、

弦楽器が全く初めての志隈

勿論、楽譜のガの字も読めない

ド素人

 

ボス、心配無用

チェロは、バイオリンのように

首や肩に挟まず、床に置ける

それに、音域が狭いので簡単

「弓を平行に弾くだけ。指は指板

に置くだけで、半音間隔よ

早ければ、半日で弾けるわ

と、唯が俣阿野を(はげ)ました

 

 

6月某日。

東京湾・お台場に近い「東京国際

クルーズターミナル」。

三階の多目的(イベントホー)エリア()で、室内楽団

による演奏会が開かれていた。

 

 

 

このターミナル、東京五輪前に

完成予定だったが。コロナ禍で遅

れに遅れ、未だ大型クルーズ船の

寄港が無い。その為、ビルの待合

フロアーを各種イベントに貸し

出している。

 

この日の演奏会は、

NPO法人日本アマチュア演奏会

のサロンコンサート。

入場無料で、四組の楽団が交代で

日頃の練習の成果を発表。

 

SMKYの四人は、見学にやって

来た。

 

この日の四組は、学生・社会人・

現役引退組、老若男女が混合。

素人ながら、どの組も中々の腕。

 

最後の組が演奏したのは、

有名なハイドンのセレナーデ

弦楽四重奏曲第17番ヘ長調

Op(オーパス).3-5

 

幻想的な調べに、

聴き入っていると。

京歌の

アナタ、起きて

の声で。

俣阿野は、「ハッ」と目が覚めた。

 

どうやら、いつの間にやら。

眠ってしまって、いたようだ。

 

なんだか、周りの様子がおかしい。

広い空間の、全てが真っ(くら)(やみ)

 

建物の片側の大きな窓から。

多数のビルの窓灯りが観える。

腕時計は、午後850分。

少なくとも、三階のフロアーが

停電だと知った。

 

演奏会のスペース。

本来ならクルーズ船の乗降客用

の待合エリア。

同じ大きさの6人掛けソファー

を、カルテット(四重奏奏者)を囲むように配置。

SMKYの席は、前から三列目。

 

目覚(俣阿野が)めて、2分位しただろうか。

演奏者がいる方角(ほうがく)から、

キャー!

と、女性の叫び声が響いた。

 

俣阿野は、素早く声の方向へ駆け

寄りスマホのフラッシュライト

()けた

光の先に、仰向けの男が。

男に手を伸ばすと、ヌルリとした

液体

そして、胸に刺さったナイフが。

ライトに反射して光った。

 

数秒後。

広い待合エリアの、全ての照明が

点灯した。

 

横たわった男を囲んで、

他の演奏者3人。

そして、俣阿野らが4人。

浜まりは、119(救急車)番へ通報

京歌は、110(警察)番へ通報

 

 

(つづく)

 

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■主な登場人物(適宜掲載)。

俣阿野志隈。私立探偵。極秘諜報員。

浜まり。弁護士。ヤメ検。裏検。

京歌。極秘諜報員。志隈の妻。

白木唯。映像クリエイター。極秘諜報員。

鬼頭史郎。警視庁公安部/肩書不詳。

 

■本作品は、フィクション作品

登場する、地域・人物・組織等の名称及び

写真・イラスト等は現存のものと無関係。

法規制度や時代考証などの齟齬は、容赦。

 

■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字

の程ご容赦を。

 

〈鰯の頭〉

 

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