2023.4.26 新曲 発売 市川由紀乃

 

 

()(かく)、解決まで時間が無い。

SMKY四人は、内部犯行に

絞ることにした。

少なくとも内部に、手引者がいる

と推測。

 

関係者全員を、手分けして

聞き取り調査をすること。

 

英国王位音楽院の関係者は、

学生とスタッフの計30人。

東京見物を名目に、東京パレス

ホテル宿泊。同一行動を要請。

彼らは、三日後に日本を発つ。

 

東京芸大の関係者も30人。

彼らには、渡航の予定はない。

 

 

そもそも、

問題のヴィオラ。

いつ、だれが、どうして

紛失に気付いたのか。

 

 

東京芸大三年の女子学生Aの、

ある行動がキッカケだった。

 

A担当は日本製のバイオリン。

演奏会終了の直後。1丁しかない

ヴィオラをどうしても弾きたく

て、演奏者(英国人女性)Bに願い出た。

Bは迷ったが、

少しだけよ

と、手渡してくれた。

 

Aが1分ほど弾いていると。

Bが突然、

音が違う」と言って、

ヴィオラを取り上げ。

自分で弾いて、

ストラディバリウスでない

と、叫んだのだった。

 

王位音楽院のバイオリニスト

何人かが手に取り。

弾いてみた結果。

違う気もする

と言う者がいた。

 

彼らの結論は、

本物か偽物か、判断不可能

となった。

 

すると、楽団の指揮者(英国人男性)が。

f(サウ)字孔(ンドホール)から見えるラベルが、

 少し違うようだ

と言ったことで。

これはニセモノ。ホンモノと

すり替えられた

と、判断されたのだった。

 

 

浜まりと京歌の調べでは。

現存するストラディバリウスの

数は、700丁近い数。

・バイオリン  約600

ヴィオラ     8丁

・チェロ       63

・マンドリン    2丁

 

日本にも、バイオリンが40

あるらしい。

 

これを聞いた俣阿野。

全世界に、(わず)か8丁。それが

 日本で盗難にあったとしたら

由々しき事態

と、改めて事の重大さを痛感した。

 

唯は、ヴィオラ奏者Bと楽団の

指揮者から再度、状況を聞く必

要があると主張し。

まりとで、B指揮者の元へ

出向いた。

結果は、

これは、ストラディバリウス

 とは違う

と、考えは変わらなかった。

 

一方、

俣阿野夫妻は、他の英国王位音楽

院の関係者に聞き取りをしが。

彼らは一様に、

私たちには、音色を聞いても

真贋(しんがん)の区別は出来ない

と答えた。

 

一方、関係者の中には、保険会

社から派遣された監視役が3人。

彼らは、英国を出国するときから

昼夜を問わず交代で見守って来

たことが分かった。

 

 

鬼頭史郎からミッションを受け、

二日が経過。明日から、サントリ

ー美術館での展示が始まる。

期間は10日間、それまでに本物

を見つけねばならない。

また、英国王位音楽院の関係者の

帰国が明日に迫っている。

 

展示会の主宰者側は、

ダミー対応」を了承している。

 

 

虎ノ門のマンションに集まった

SMKYの四人。

浜まりと京歌が調べ上げた、

ストラディバリウスに関する

情報を精査した。

 

そして浜まりが、

ストラディバリウスについて

 少し語ってもいいかしら

と言って話したことは。

 

アントニオ・ストラディ(ストラディバリウス)バリ

1600年代後半から1700年の

初めに活躍した、北イタリアの

バイオリン職人。

 

彼の手掛けた弦楽器は、他の追随

を許さない「唯一(ゆいいつ)無二(むに)」の音色。

 

当時から現代にいたるまで。

楽器職人は元より、音楽家・科学

者・農水学者・心理学者の手によ

って。同じ楽器を作ろうと試みら

れているが。

誰一人、完成した者はいない。

 

 

今から5年前、

ヨーロッパのある都市で。

ある()が行われた。

それは、

超一流と言われる、

演奏者数十名に、何種類かの

バイオリンを弾かせ。

それを、バイオリン演奏に精通し

た者を数十人に聴かせた。

 

*この実験は、ダブル・ブラインド・テスト

(二重盲検試験)。薬の治験などで用いら

 れる。

 

そして、演奏者と聴衆の双方に

どの楽器の音色が良いか

と、(たず)ねたのだ。

 

結果は、大きくバラ付いた。

中に、名器と言われる、ストラデ

ィバリウスもあったのだが。

 

 

そして最後に浜まりが、

・この3~4百年の間贋作(がんさく)騒動

 は全世界で枚挙(まいきょ)(いとま)がない。

 殆どが、バイオリン。

・ほぼ全てが、真偽(しんぎ)が不明のまま

贋作処理に。

・科学的な分析でも、年代や材質

 が分かるだけ。

音調は聴者の主観。

・ヴィオラは、数が少なく真偽の

比較が不可能。

 

そして、結論が出た。

 

 

 

翌朝、

サントリー美術館がある六本木

東京ミッドタウン ガレリア

三階フロアーに。

黒布に包まれた、

ヴィオラが置かれていた。

 

ヴィオラには、

一通の手紙が添えられ。

文面には、

どうしても、一度弾いてみたく

 て拝借してしまいました。素晴

 らしい音色に感動しました。

お返し致しますゴメンナサイ

と、書かれていた。

 

 

美術館から、発見の連絡を受けた

警視庁公安部の鬼頭史郎。

帰国直前の、英国王位音楽院の

指揮者に手渡した。

 

指揮者は、

盗まれなかった「(ゆみ)」をケース

から取り出し。手渡されたヴィオ

ラを調弦(ちょうげん)し、静かに弾き始めた。

 

そして、

本当に、良かった

と、涙ぐんだ

 

 

そのヴィオラは、指揮者によって

f(サウ)字孔(ンドホール)から見えるラベルが、

 少し違うようだ

と言われた楽器だった。

 

もしや、同じものではないのか。

それって、ARUKAMO・・・

真相を知るのはSMKYのみ。

 

 

(つづく)

 

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■主な登場人物(適宜掲載)。

俣阿野志隈。私立探偵。極秘諜報員。

浜まり。弁護士。ヤメ検。裏検。

京歌。極秘諜報員。志隈の妻。

白木唯。映像クリエイター。極秘諜報員。

鬼頭史郎。警視庁公安部/肩書不詳。

 

■本作品は、フィクション作品

登場する、地域・人物・組織等の名称及び

写真・イラスト等は現存のものと無関係。

法規制度や時代考証などの齟齬は、容赦。

 

■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字

の程ご容赦を。

 

〈鰯の頭〉

 

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