2023.4.26 新曲 発売 市川由紀乃
ＡＲＵＫＡＭＯ
EPISODE Ⅱ 弦楽器
今日からスタート
■主な登場人物（適宜掲載）。
▶俣阿野志隈。私立探偵。極秘諜報員。
▶浜まり。弁護士。ヤメ検。裏検。
▶京歌。極秘諜報員。志隈の妻。
▶白木唯。映像クリエイター。極秘諜報員。
▶鬼頭史郎。警視庁公安部/肩書不詳。
■本作品は、フィクション作品。
登場する、地域・人物・組織等の名称及び
写真・イラスト等は現存のものと無関係。
法規制度や時代考証などの齟齬は、容赦。
■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字
の程ご容赦を。
〈鰯の頭〉
◇◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇
真上から眺と、「逆・くの字」。
内堀通りに面した地上18階建。
白と赤に塗られた、巨大アンテナ
が屋上に。
TVドラマで、お馴染みの建物。
ここは、警視庁本部庁舎。
集まったのは、
庁舎ビルの案内図の、どこにも
載っていない部屋。
招集したのは、
警視庁公安部/鬼頭史郎。
以前の肩書は、外事課の管理官。
だが今は肩書不詳。
強いて言えば、
警察庁長官直属の「特任管理官」。
天井は、乳白色の全面間接照明。
四方の壁は、赤褐色の高級マホガ
ニー材。窓は無い。
60平米の部屋の中央に、壁と
同じ赤褐色の楕円形テーブル。
テーブルの上には、最新モデルの。二つ折りのスマホとカードが。
「S」の印字のスマホの席に、
俣阿野志隈。
「M」の印字のスマホの席に、
浜まり。
「K」の印字のスマホの席に、
俣阿野京歌。
「Y」の印字のスマホの席に、
白木唯。
が、それぞれ座った。
鬼頭は、
「チーム名SMKY。任期二年」
「任務遂行中は、貸与のスマホを
携帯すること。カード残高は、
常時１千万円。引出し自由」
「仕事の依頼は、志隈を通じて。
私の役割は、ただの連絡窓口」
これだけを話して、部屋を出た。
俣阿野が続けた。
「我々のチームの役割は、現代版
の必殺じゃなく必達・仕事人」
「チーム名の意味は、ＳＭＫＹ
＝臭い。Ｓ＝しわい、Ｍ＝まり
Ｋ＝きょうか、Ｙ＝ゆい
センスが無いが、ご勘弁を」
◆
「志隈、お前若くなったな。俺と
同い年のハズなのに。美人の奥
様の手料理のお陰か」
「史郎、お前は桜田門と言うより
霞が関の役人の匂いがするぞ」
夜の帳が下がったばかりの、
ガード下の居酒屋で。
焼き鳥と冷奴を肴に、ビールを
注ぎ合うのは鬼頭と俣阿野。
「ところで志隈、お前。ヴィオラ
とバイオリンの違いを知って
いるか」
「なんだ、同じじゃないのか」
「やはりなぁ」
「それが今回の仕事だ。いつもと
同じ、極秘の仕事」
と言って、鬼頭が俣阿野に依頼し
た案件とは。
三日前。赤坂サントリーホール
で、英国王位音楽院と東京芸大の
合同オーケストラが開催された。
演奏会には、世界最高峰の弦楽器
の代名詞「ストラディバリウス」
21丁が集結。
内訳は、
バイオリン18丁、ヴィオラ・
チェロ・ギターが各１丁。
総額210億円を超える名器。
ある意味、今世紀最大の。
ストラディバリウス・フェスティ
バル。
演奏会は無事終了。
明日から10日間
サントリー美術館で、
「ストラディバリウス展示会」
を開催する予定なのだが。
大問題が発生した。
21丁の中で、最も高価なヴィオ
ラ（推定35憶円）が、忽然と
姿を消したのだ。
盗難・紛失に備え、保険に加入し
ていると言え。事は、国際的信用
問題になり兼ねない。
展示会は、ダミーを展示するが。
終了までに、内密に見つけるのが
今回のミッション。
単なる紛失なら、警視庁遺失物セ
ンターに書類を提出なのだが、
そんなレベルの話ではない。
少なくとも、窃盗事件。
通常なら刑事部刑事３課の職掌。
直ちに公開捜査となるのだが、
それが出来ない事案。
SMKYが集まったのは、虎ノ門
レジデンシャルタワーの俣阿野
の自宅マンション。
志隈を除く三人は皆、ストラディ
バリウスを知っていたが。
ヴィオラとバイオリンの違いを
知っていたのは、白木唯だけ。
「そうね、ざっくり言えば。
少し形が大きく、少し音が低い
のがヴィオラかな」
京歌が、
「大きなチェロは兎も角、ヴィオ
ラ１本だけの盗難は変ね。序
にバイオリン２本くらい、持っ
て行っていいのに」
と発言。
「バイオリンやチェロのように
弓で弾く擦弦楽器は、１本でな
く１丁と数えるのよ。ギターや
三味線のように指や爪や撥で
弾く撥弦楽器は、１本とか１台
かな」
と、唯が。
更に、俣阿野が
「盗難は、盗まれた側の言い方。
盗んだ側の言い方なら、窃盗。
つまり、窃盗罪はあるが盗難罪
は無い」
すると、まりが
「皆さん、枝葉末節に拘って。
どうしたの。そこに犯行の糸口
があると言うのかしら」
と言った。
（つづく）
