(夏目)石の小説と、重なる夢を。

幾度となく、見ている。

 

 

こんな夢をみた。

 

(22歳)()頭は、

文京区本郷の、東大キャンパス

内にある「三四郎池」にいる。

 

彼女(当時の)が、「兄が東大に行っている

と言った。

(すご)い、優秀」と云うと、

彼女は謙遜(けんそん)して「それ(ほど)でも」、

と応えた。 

 

ある日。

彼女が、「兄に用事があるので

東大へ一緒に行こう」と誘って

くれた。

 

二人は赤門(あかもん)ではなく、竜岡門(たつおかもん)

ら入った。

 

 

初対面の彼は、短髪。

身長180cm

中々の男前「ナイスガイ(あの頃の言い方で)」。

 

広いキャンパスを、三人で散歩。

夏目漱石の小説「三四郎」に登場

する三四郎池を、初めて目にし。

 

お兄さんは、三四郎より全然

カッコイイですね」などと。

訳の分らないことを、口走(くちばし)った。

 

 

それから半年後。

ひょんなことから、ナイスガイ

の正体が東大生でなく。

キャンパス内の、売店の店員だ

ったことを知り。

早とちりに、冷や汗を()いた。

 

 

一度、

ここで目が覚めた。

 

そして、続けて。

こんな夢をみた。

 

鰯の頭は、三四郎になっている。

 

自分から借りたお金を、

返そうとしない()次郎(じろう)が。

その言い訳に、用いた(くだり)に苦笑

している。

 

『知ってる男が、失恋の結果、世

  の中がいやになって、とうとう


自殺しようと決心したが。海も
いや河もいや、噴火口は尚いや。

首をくくるのは、(もっと)もいやと

いう訳で。やむをえず短銃(たんじゅう)

買って来た』。

 

『買って来て、まだ目的を遂行

しないうちに。友達が金を借

りに来た。金は無いと断った

が、是非どうかしてくれと訴

えるので。仕方なしに、大事な

短銃を貸して()った』。

 

『友達は、それを質にいれて

一時を(しの)いだ。都合がついて、

質を受け出して返しに来た時

は、肝心の短銃の(ぬし)はもう

 死ぬ気がなくなっていた』。

 

『だから、この男の命は。金を借

りにこられたために、助かっ

たと同じ事である』。

 

 

そういう事もあるからなあ

と与次郎がいった。

 

三四郎は、ただ可笑(おか)しいだけで

ある。

 

ここで目が覚めた。

 

夢から覚めた鰯の頭は、

三四郎の想い人「美禰子(みねこ)」と。

あの(当時の彼)()が、重なって(よみがえ)った。

 

 

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夢の話は、妄想や空想よりもリアリティ。

全話とも、作者の実体験が関わっている。

 

「こんな夢をみた」で始まり、

「ここで目が覚めた」で終わる。

 

タイトルの「夢十夜」は、

夏目漱石の短編小説名を、勝手に拝借。

 

一夜(いちや)一話(いちわ))完結の「(ポエ)()集」。

 

「夢十夜」は、49話を予定。

 

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