公安の鬼頭史郎からの、
新たな依頼。
内容を、聞き進むと。
そこに登場したのが。
一年ほど前に。
「スパイ罪」で、
ロシアに拘束されたハズの。
白石栄一の名前。
彼は、
今は㈱MJの代表取締役社長に
就く、白木香織の元夫である。
香織とは、昨年の夏。
協議離婚が、成立している。
鬼頭は、俣阿野に話を続けた。
白石は陣内智之に、
こんな話を、したと言う。
M物産を、解雇され。
今、会社を興した。仕事は。
中国からの「特殊な食材」輸入。
白石はハッキリ言わなかったが、
陣内の勘では、覚醒剤絡み。
そこで再び。
公安部が動く前の、事前作業。
つまり、前捌きが。
私立探偵へ、廻って来たのだ。
この一年余。
俣阿野には、何かの影のような
ものが付き纏っていた。
それは、単なる「奇遇」の一言で
済まされない。
運命的なものさえ、感じてた。
◇
陣内智之が営む、輸入雑貨商の
会社は。
渋谷区宇田川町の、雑居ビルの
一室。
同じビルに、
愛人の范志玲が、ママを任され
ている「スナック范」。
鬼頭によれば。
「この店で、陣内と白石が近く
会う」との情報。
俣阿野と唯は、
職場の上司と部下を装い。
フリー客で、訪れた。
カウンター席、６席。
ボックス席、４人席が二ヶ所。
小さなスナック。
時間は、午後７時を過ぎたばか
り。
他には、客がカウンター席に
男女の一組だけ。
俣阿野達は、
ボックス席の一つに、座った。
カウンターの内側に、
２０代後半と思しき男の子。
ママは、未だ来ていないようだ。
俣阿野と唯の二人は。
既に、どこかで飲んできたよう
な様子で。
大きな声で。
笑いながらカウンターに近づき。
男の子に、話し掛けたり。
トイレへ行く際も、もう一つの
ボックス席に、摑まったり。
ヨロヨロ。
ビールを、二本飲み。
小一時間で、出て行った。
二日後。白昼２時。
「スナック范」が入っている
雑居ビルの。隣の駐車場に、止ま
っていたレンタカーから。
俣阿野のスマートウォッチに、
連絡が来た。
レンタカーのダッシュボードに
は、高性能の盗聴受信機が隠さ
れている。
集音マイクは、四ヶ所。
カウンター二ヶ所、それぞれの
ボックス席の各一ヶ所。
そう、二日前に。
俣阿野らが、酔っ払い客を装い。
仕掛けたもの。
録音の作動は、指定した音波を
キャッチすると開始する仕組み。
録音機には、陣内の声を予め
設定してあった。
◇
渋谷宇田川町の駐車場から。
盗聴受信機を持ち帰った、
俣阿野。
神田の事務所で、唯と二人で。
白石栄一が、陣内智之に持ち掛
けて来た事柄を。
息を呑んで、聞いた。
その音声に、
内容も、然ることながら。
想定外の人物の声が。
訪問者の皆さまへ
「想定外の人物の声」って。
誰の声でしょうか？
皆さまで、推理してみて下さい。
答えは、
６/24配信FUTURE ㉓ を。
お楽しみに。 鰯の頭
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
つづく）
■登場人物の紹介は、適宜掲載。
▶俣阿野志隈。偵事務所所長。元警視庁捜査一課
刑事。
▶吉本京歌。相。クワドリンガル（日英仏伊）。
フランス人クオーター。俣阿野の妻、懐妊中。
▶深川舞。大手商社M商事から派遣会社MJに転
職。新規事業部張。白石香織とK大からの友人。
▶白木香織。大手商社M物産秘書室。妹の捜索で
俣阿野と京歌とイタリアに。夫・白石栄一と離婚。
㈱MJ新社長に選出予定。白石から旧姓・白木に。
▶白木唯。香織の妹。一時行方不明者。テロ容疑逮
捕、釈放帰国。俣阿野の相棒見習い。
▶周妮周。中国人。ルポライター。イタリアで俣阿
野と遭遇。北海道で再会、旅行。㈱MJの上海支
社の「首席」に就任。俣阿野とセフレ関係。
▶楊雪迎。唯の同窓。中国人。IQ135の天才美女。
▶鬼頭史郎。警視庁公安部・外事課・管理官。
▶陣内智之。輸入雑貨商。元キャリア警察官。
▶范志玲。中国人。陣内の愛人。
▶白石栄一。香織の元夫。Ｍ物産・エネルギ
ー本部ロシア担当。スパイ容疑で拘束。釈放。
■本作品に登場する、地域・人物・組織等の名称
及び写真・イラスト等は。フィクション作品につ
き、現存するものと無関係。
■また同様、法規的齟齬、時代考証の矛盾について
ご容赦を。特に、コロナ禍などの状況。
■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字の程。
ご容赦を。
〈鰯の頭〉