鰯の頭のmy Pick

 

 

朝食は、ルームサービス。

彼女らの部屋は、二つのベッド

ルームの他に。広いリビングと

ダイニングまでもが。

 

広いダイニングテーブルに、

朝から「アフタヌーンティー・ス

タンド」や「フルーツの山」。

 

俣阿野には、経験したことがな

い。空間であった。

 

そして、そこには。

昨夜の出来事の「欠片(かけら)」もなか

った。

 

 

予定通り、ピサに向かった。

一泊して、明後日には再びフィ

レンツェに戻って来る。

ホテルは変わるので。大きな荷

物だけは、明後日のホテルに回

送した。どんなことにも手回し

がいい京歌だ。

 

 

「ピサ」と言えば、「ピサの斜塔

くらいしか、思い出せない。

 

博学の二人を前に。

ガリレオの実験」に(まつ)わる

蘊蓄(うんちく)を述べたとこで、恥を()

そうなので。止めた。

 

しかしながら、じっと仕手(して)られ

ず。

ガリレオ・ガリレイは、私と思

考が同じ

「彼は、アリストテレスの長い

間の定説を。次々に打ち砕い

た」

物体の落下速度しかり、

天動説しかり」

 

「彼こそ、稀代(きだい)ANAGACHI

 人間

世に、定説などない。これぞ

 主観の真髄(しんずい)

と、少し熱く語ってしまった。

 

 

 

定番の斜塔に、一応は登ったが。

京歌が、「今回は、地中海沿岸(えんがん)

望む場所は無縁。折角(せっかく)だから、こ

こから十数キロで、リグリア海

岸。マリーナ・ディ・ピサビーチ

で、海鮮料理でも」と、誘った。

 

タクシーで、あっという間に。

何のことは無い。

ピサでの宿泊地が、このビーチ

にあった。

ホテルは、唯一の5ツ星。

「センティド・トスカーナ・シャ

ルメ・リゾート」

 

月明かり映る地中海を背景に。

ディナーは。

巨大ロブスターが入った「ブイ

ヤベース」

 

 

今夜が、イタリア4泊目。

豪華なホテルと食事。

そして、「美女二人」。

 

思わず、

こんな生活。強ち(ANAGACHI)悪くない

と、口走(くちばし)った俣阿野であった。

 

 

朝、1階のリストランテには。

既に、二人の姿が。

 

俣阿野の口から、自然に。

Buong(ボンジョルノ)iorno」が。

 

京歌が、

Avete dormito(よく眠れましたか) bene

と、微笑(ほほえ)んだ。

mol(とっても)to」と、俣阿野は応じた。

 

 

四時間前まで。昨夜も香織が俣

阿野のベッドにいた。

 

 

急遽(きゅうきょ)、京歌がスケジュールの

変更を提案してきた。

 

当初は、フィレンツェに戻り。

明日、ミラノに発つ予定だった

が。

このまま、ミラノに向かうこと

になった。

 

残る日程を、ミラノで過ごすこ

とを、白石香織が京歌に提案し

たのだった。

 

 

ピサ中央駅からミラノ中央駅ま

で。およそ3時間。

フィレンツェのホテルに預けた

荷物の到着は。明日の昼になる

らしい。

 

ミラノはパリに並ぶファッショ

ンの街。

京歌と香織は、チェックインを

済ますと。俣阿野をホテルに残

し、早速ショッピンングへ。

 

 

残された俣阿野も、一人で街へ

出た。夕食も別々にと、約束。

 

東京でさえ、

仕事でGoogleマップを使うこ

となどない。

だが、海外へ来ると。

これは便利なアプリ。

同じくGoogleの、音声翻訳

アプリだけで。充分、一人歩きが

可能だ。

 

元々、美術館や博物館の(たぐい)には。

興味が無い。

まして、ドーモ(大聖堂)などの建造

物にも。

 

 

一時間ほど、彷徨い。

まだ陽が高いが、バールに入っ

た。

イタリアには、二つの人種がい

ると言う。

 

ナポリ男に代表される、南の人

種と。北の人種、ミラノ男

 

女性と観れば、誰かしこなく軟

派する。明るく陽気なナポリ男。

一方、ミラノ男は。苦味(にがみ)(ばし)った

インテリ気取りが多い。

 

俣阿野は、自称ミラノ男

注文したのは、イタリアの定番

ビール「Peroni(ペローニ)」。

 

イタリ人は、それ程ビールを好

まない

ドイツやイギリスの3分の1

それも、それほど冷やさずに飲

む。老いも若きも、男も女も

ワイン党だ。

 

まだ、(よい)(くち)

ホテルに戻るには、早い。

 

スマホに、

「ナイトクラブ」と呼び掛ける

と。「Discotec(ディスコテカ)a」が、数十件表

示。

いずれも、店内で踊る女の子の

写真付き。

 

地図アプリで検索すると。

5分圏内に、なんと七店舗も。

TOP画面の「Bobino club」に

潜入した。

 

店内の雰囲気は、六本木のディ

スコと大差はない。

なんとなく、六本木と同じく。

IT(アイティー)人種が多い気が。

強ち(ANAGACHI)違って、いないだろう。

 

一人で飲んでいると、数分で

若いイタリア娘が隣に。

大人の会話で、知っているのは。

Ti(ティ) amo(アモ)」と「Amore(アモレ) mio(ミオ)

だけ。

 

互いに、スマホに向かって。

音声翻訳。

「お名前は」=「II nome e

Claudia」=「クラウディア」

 

Paese dorigine」=「母国は」

「日本から」=「Dal Giappone

 

 

俣阿野の主観(ANAGACHI)では、

彼女は、クラウディア・カルディ

ナーレの二十歳の頃

 

 

「ホテルの部屋で、飲み直そう」

と言うと。

にっこり笑って、指を三本立

た。

 

 

(つづく)

 

■時代考証の矛盾をご容赦下さい。

「コロナ禍での現下の諸規制(海外

渡航の実情など)」

 

■登場人物の紹介は、適宜掲載。

俣阿野志隈。探偵事務所所長。元警視庁捜査一課

刑事。

吉本京歌。俣阿野探偵事務所のスタッフ。

白石香織28歳。本案件の依頼者。大手商社勤

務(秘書室所属)。既婚者。K大経済学部卒。

白木唯。白石香織の妹。行方不明者。

入山愛美。白木唯の従姉。

白川涼平。白木唯の学友。ヴェネツィアで白木に

遭遇。

 

■本作品に登場する、地域・人物・組織等の名称

 及び写真・イラスト等は。フィクション作品につ

き、現存するものと無関係。

■また同様、法規的齟齬(そご)、時代考証の矛盾について

ご容赦を。

■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字の程。

ご容赦を。

 

〈鰯の頭〉