鰯の頭のmy Pick

 

えり冰冰(ビンビン)は、すでに中年増(なかとしま)

仕事が仕事ゆえ、周りに結婚を

勧める者もいない。

 

(セン)」では年上のまりが、その役

だろうが。

まりは、早くに。二人の関係に、

気づいているので。

あえて、何も言わない。

 

楊枝屋(ようじや)」は、世を忍ぶ仮の姿。

(セン)」が、本業だが。これとて、

堂々と表家業と、明かせない。

 

えりは時々、暇つぶしに冰冰(ビンビン)

連れ出し、博打場(ばくちば)へ出入り。

 

その際は、二人とも。

覆面(ふくめん)(ふか)(あみ)(がさ)を被り。

金で雇った、用心棒を付け。

 

江戸近郊の庄屋の娘に、

成り済まし。

 

丁半もチンチロリンも花札も。

どれをやっても、負け知らず。

二人にとって、唯一の気晴らし。

 

 

大岡越前守は、町奉行として。

自他ともに認める、ヤリ手。

それでいて、遊びも同様のヤリ

手。

 

江戸に犯罪が多いのは、暇な

男どもの()け口が、少ない」が、

持論。

 

その話を、眞一郎に漏らしたと

ころ。

「それは、良いお考え」

「早速、立案しましょう」と、

二つ返事で、話に乗った。

 

 

間もなく、提出されたものが。

 

・施策名「幕府公認博打場計画」

・目的「犯罪対策」

・場所「築地魚河岸跡地」

・胴元大江戸(第三分野)娯楽所」

・使用人身分「準役人・俸禄制」

寺銭「二割五分を幕府に上納」

 

 

この計画の、最大の目玉は。

寺銭「二割五分を幕府に上納」

である。

 

裏社会が牛耳(ぎゅうじ)賭場(とば)から。犯罪

対策を名目に、ヤクザを追い出

し。

かつ、財政難に苦しむ幕府に、

貢献する。優れもの。

 

「大岡様、この計画は。きっと

吉宗公も喜ばれるハズ」。

「この組織の首領に、適任者が

おります。お任せを」

 

 

「幕府公認賭博場計画」は、トン

トン拍子で、進んだ。

 

何かと五月蠅(うるさ)く。注文を付ける。

老中評定も、「犯罪対策」いや、

なにより「上納金、二割五分」に、

色めき立った。

 

 

眞一郎が、大江戸(第三分野)娯楽所」

首領に推挙したのは。

元博打場の娘。今は世直し「(セン)

の相棒、えり

 

 

大岡越前(えちぜん)(のかみ)は、

「えっ、女子(おなご)が。大丈夫か」と、

懸念を呈したが。

 

吉宗公は、逆に大賛成

「それは良策。博打場と聞くと

 誰もが、胡散臭(うさんくさ)く思うが。頭が

 女子なら、それを消せる」と。

 

「吉宗公は。なにかと女子(おなご)

目線を気にする性格」

 

えりの起用は。

世間の人気を、気にする吉宗公

を読んでの。秘策であった。

 

 

大江戸(第三分野)娯楽所」の建設は、突貫

工事で進められた。

 

 

運営主体は、官民出資「娯楽所」。

「官」内部では、主導権を巡り。

税を(つかさど)勘定奉行と、治安を

担う町奉行が、対立。

 

町奉行に、軍配が上がったが。

今度は、実務を巡り。南町奉行所

北町奉行所が、対立。

最終的に、大岡越前守の南町

決まった。

 

 

一方、「民」の参加は。

表向きには、「くじ引き」による

入札方式であったが。

結果、「全商」が見事落札

 

 

「大江戸娯楽所」は、

「丁半賭博場」が大小5箇所。

「チンチロリン部屋」5部屋。

「花札部屋」5部屋。

 

他に、付帯設備として。

 

「宴会場」大小5部屋。

「食事処」寿司、蕎麦、鰻、

 うどん、甘味処の5箇所。

 

そして、開所後に。

江戸っ子の人気を、集めた施設。

 

「温泉湯屋・大江戸(おおえど)温泉(おんせん)

 

この施設で働く者は、

全員準役人扱い。

つまり、「湯女(ゆな)(さん)(すけ)」も役人。

定期的に、()()検査が行われた。

 

 

 

再び、天職に()いた「えり」。

 

五日に一度、首領えりが。

 

自ら「(つぼ)振る」名付けて、

 

 

 

 

 

 

大盆(だいぼん)茣蓙(ござ)(まつり)』。

 

 

 

 

えりの「立膝(たてひざ)」観たさに。

丁半の会場は。大盛況。

 

 

この年、享保23(1738)()師走。

江戸幕府から。

その年最も活躍した女子(おなご)

贈られる。

 

『第5回おなご大賞』を。

えりが受賞した。

 

 

なにかと、「5」に縁のある

えりであった。

 

(つづく)

 

   ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

 

お知らせ

 

妄想小説「江戸の片隅」

12/301/4

お休みします。

 

1/5から再開します。

 

皆さま、良いお年を。

 

   ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

 

 ■登場人物の紹介は、適宜掲載。〈年齢は数え年〉

   ▶源平眞一郎。南町奉行所・与力。

   ▶中竹平蔵。浪人。「なんでも屋」の番頭。

   ▶きの。紀乃姫太夫。人形浄瑠璃の芸人。

  ▶まり。眞一郎の妻。三つ子の母親。

  ▶もも。海神新地の遊女。眞一郎が身請け。

   ▶尾崎将輔。えりの従兄。印西牧の牧士。

   ▶えり。女牧士から「なんでも屋」に。

    ▶呉冰冰。清国商館長の娘。「なんでも屋」に。

   ■本作品に登場する、地域・人物・組織等の名称

   及び写真・イラスト等は。フィクション作品につ

   き、現存するものと無関係。

  ■また同様、法規的齟齬(そご)、言語や生活物資等の時代

     考証の矛盾についても容赦を。

  ■特に、コミュニケーションツールの携帯(スマホ)やテレ

     ビ、パソコン。交通手段の自動車や電車、飛行機

     が無き時代を、念頭に。

    ■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字の程。

      ご容赦を。

    〈鰯の頭〉