鰯の頭のmy Pick

 

眞一郎は、事業立ち上げに当た

り。三条件を出していた。

まり、えり、冰冰(ビンビン)の女三人が。

提示した事業は。

三つの条件を、満たしていた。

 

条件とは。

・儲けより、社会貢献。

・物より人との関わり。

・ものの投資(建物・道具・人材)

は、最小限に。

 

 

ただ、一言で。

「〇〇業」と、言い表す名称が

浮かばなかったと言う。

 

少し、年上の。

まりが、口火を切った。

 

「世の中には。理不尽(りふじん)なことで、

心に痛みを抱えている、女子(おなご)

が沢山いる」。

「私達の仕事は。それを聴いて

あげ、少しでも取り除いてや

り、(いや)してあげること」

 

「江戸の町には、仕置人(しおきにん)なる

 殺しを請け負う者がいる」

「私達は、殺しはやらない。ただ

 依頼者が。心の癒しに、相手の

死を望むなら。死に相当する、

苦痛を与えることは、(やぶさ)かで

ない」

 

 

「依頼の受付は、日本橋の橋の

(たもと)に"願い箱を置く」

 

「願いを、実行するかしないか

は。私たちが決める。決めるに

当たっては、秘密(ひみつ)()に、面談お

よび内偵(ないてい)を行う」。

 

「面談の場所は、こちらが指定。

その際、私たちは覆面(ふくめん)姿

 

代金は原則無料。ただし、制裁

すべき相手が、悪行で得た金

品は容赦なく頂く

 

「"願い箱“には、"女子(おなご)専用・

 心の痛みを除きます"・無料」

 

えりが、補足した。

依頼を、やるかやらないか。

多数決で決める。

三人では、二対一で直ぐ決まる。

深く検討するには、偶数が良い。

 

偶数で二対二は。

一見(いっけん)決まらいように、思えるが。

三対一や四対零にする為の。

議論が生まれる。と言った。

 

そこで、新たに。

一人だけ増員を、申し出た。

 

 

発言を控えていた、冰冰(ビンビン)が。

多少の(なまり)があるものの、流暢(りゅうちょう)

な日本語で。

「私達の仕事。こちらの身元が

バレない事。大事」

「だから、覆面、良い考え」と。

 

 

まりは、

私達三人は。依頼者の心理を読

み解くのは、得意だが。

 

内偵での、諜報(ちょうほう)活動は。

得手ではない。

出来れば、「()()(いち)」経験者が

仲間にいると、心強い。と。

 

 

三人の提案は、眞一郎の頭の

片隅にも無かった。

思い掛けない、ものだった。

 

だが、琴線(きんせん)に触れるには。

充分な内容であった。

 

それにしても、冰冰(ビンビン)

短期間に日本語が。ビックリ。

 

 

眞一郎が、「自分も仲間に入りた

いなぁ」と、冗談を言うと。

 

まりが、「駄目です。貴方は女子

を癒す方法を、抱く以外知らな

いから」と言って。えり冰冰(ビンビン)

の顔を(のぞ)きながら、笑った。

 

まりは、夫と二人の女子(おなご)の関係

など。歯牙(しが)にも掛けていない、

様子である。

 

 

くノ一」探しは、大岡様にお願

いしよう。

なにしろ、この仕事。

江戸の治安(ちあん)維持にも、直結する。

町奉行所の、「外郭(がいかく)団体(だんたい)」みたい。

とさえ思った。

 

 

甲賀、伊賀など。

組織所属もいるが。

忍者の多くは、個人で動く。

一匹狼。

仲間との、協調性など不要。

 

だが、眞一郎は。

男には、仲良しを排除したが。

経験的に、女の組織は

仲良しでなければ、持たないと

思っている。

 

 

まりとえり冰冰(ビンビン)は、ウマが合う。

 

よって、三人が気に入らない

「くノ一」は、不採用を約束。

 

 

女子の心の痛みを救う

組織名を「(セン)」と、命名した。

 

(セン)は、一文字で。

女子(おなご)の美しさ、(あで)やかさを

表す」文字。

 

 

大岡越前守が推挙した、

くノ一の名は。「ゆり」。

 

眞一郎は、ゆりに。宿題を出した。

それは、

三日の内に。己の身分を隠し。

まり、えり、冰冰(ビンビン)三人

個別に接触し。

「好印象を与える」と言うもの。

 

簡単そうに、思えるが。

かなりの難易度。

 

誰が、いつ、どこで、なにを、

なぜ、どのように。

 

の情報なし。

諜報活動を、生業(なりわい)とする忍者な

ら容易なハズ。

 

 

四日後、

八丁堀の「(セン)」に。

眞一郎と、まりら全員が集合。

 

そこに、

「一人の女子(おなご)」が呼ばれた。

 

(つづく)

■登場人物の紹介は、適宜掲載。〈年齢は数え年〉

▶源平眞一郎。南町奉行所・与力。実業家。

▶中竹平蔵。「なんでも屋」の番頭。

▶まり。眞一郎の妻。三つ子の母親。

▶もも。海神新地の遊女。平蔵と夫婦。

▶えり。女牧士から「なんでも屋」に。

呉冰冰。清国商館長の娘。「なんでも屋」に。

▶ゆり。くノ一。「なんでも屋」に。

▶太助。元漁師。ももの父親。

▶太一。ももの弟。

▶尾崎将輔。印西牧の牧士。

▶大岡越前守。大岡忠相。町奉行。

 

■本作品に登場する、地域・人物・組織等の名称

 及び写真・イラスト等は。フィクション作品につ

き、現存するものと無関係。

■また同様、法規的齟齬(そご)、言語や生活物資等の時代

考証の矛盾についても容赦を。

■特に、コミュニケーションツールの携帯(スマホ)やテレ

ビ、パソコン。交通手段の自動車や電車、飛行機

が無き時代を、念頭に。

■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字の程。

ご容赦を。

〈鰯の頭〉