鰯の頭のmy Pick

 

小田原宿から箱根宿まで。

距離は無いが、厳しい山道。

後年(明治34年)(中学唱歌)に唄われた。

箱根八里▼」。

♬ 箱根の山は 天下の剣

    函谷関も 物ならず

  万丈の山 千仞の谷 ♬

 

だが、奉行御一行様。今日は。

中間にある「箱根宿」まで。

4里8町(16,6㎞)。の行程。

 

 

芦ノ湖湖畔に、「箱根(はこね)関所(せきしょ)」。

関所の通行は、明け六つ(朝7時)

ら暮れ六つ(夕方5時)まで。

夜間通行は禁止となる。

 

江戸へ向かう者は。

「鉄砲」の持込以外は、

検閲(けんえつ)(ゆる)

だが、

江戸から上方へ向かう

婦女子は。特に厳しい。

 

これを、

(いり)鉄砲(てっぽう)出女(でおんな)」と言う。

 

江戸の治安維持の為、武器の持

込を規制。そして、

江戸屋敷に。人質として滞在す

る大名の妻女の、脱出防止の為。

 

出女を取調べるのが「人見女(ひとみおんな)」。

検査は厳重。

裸にして身体検査。

股を開かせ。

ホクロや、妊娠の有無をも。

確かめた。

 

関所破りは、(はりつけ)での公開処刑。

 

原則、「(めかけ)には通行手形が、発行

されない」その為。賄賂(わいろ)で処理す

ることになる。

きのは、「奉行の妾」と(いつわ)り。

三人分の賄賂を、番人に渡した。

 

 

今夜の宿。「箱根宿」。

関所と箱根峠の間の、狭い場所。

五十三次の宿で、標高が一番

除けば。他に何もない。

 

 

夕食が終わると。

奉行が眞一郎を、部屋に呼んだ。

要件は。

きのを一晩。賄賂代として、奉行

殿に貸し出せと言う。

たとえ奉行殿と言えど。

手放したくない眞一郎。

そこで、一計を。

 

「奉行殿。実は」

「妻の(めい)と知りながら」

程ヶ谷(ほどがや)宿(じゅく)で、この与力(よりき)が」

「手を付けて、しまいました」

 

「それが、あの娘。大変な」

汐吹女(しおふきおんな)で、ございまして」

尋常(じんじょう)では、ございません」

 

「それはもう」

洪水のような、(しお)なのです」

(とこ)が、池のようになっても

「よろしければ」

 

その話を聞いた、奉行は。

「それは、困る」

其方(そなた)も、難儀(なんぎ)であったな

で、一件。落着。

 

箱根の宿は、数も少なく。

この夜まりは、妾と相部屋に。

 

 

7日目の朝。

箱根峠を、三島宿を目指す。

山また山。難所の峠道。

奉行御一行様は、無事宿に到着

箱根宿(14,8)()28町。三島宿/(1泊)

 

三島宿のある土地は。

江戸幕府の天領地。古くから

「三島明神」の門前町でもある。

なにより、有名なのが。

三島(みしま)女郎(じょろ)(しゅう)」。

 

豊臣秀吉が、北条攻めに際し。

兵の慰安に、遠く京や上方から

集めた女郎が。起源。

 

 

御一行様の男(6人)は。奉行、与(3人)、同(2人)

無事の箱根越え、を祝って。

今宵は。

三島芸者を呼んでの、宴会。

 

ご存知。農兵(のうへい)(ぶし)」〈ノーエ節〉

で、大盛り上がり。

🎶

富士の白雪ゃノーエ 富士の白雪ゃノーエ

富士のサイサイ 白雪ゃ朝日でとける 

 (そりゃ)

とけて流れてノーエ とけて流れてノーエ

とけてサイサイ 流れて三島にそそぐ 

三島女郎衆はノーエ 三島女郎衆はノーエ

三島サイサイ 女郎衆はお化粧が長い

(そりゃ)

お化粧長けりゃノーエ  お化粧長けりゃ

ノーエ ・・・・・・🎶

 

ノーエ節が、延々と続く。

 

奉行や、他の与力と同心達は。

芸者よりも「三島女郎が、いい」

と、いつの間にやら。何処かへ。

眞一郎は、そっと宿を抜け出し。

きのが待つ、別宿へ。

 

一度目が終わり。

二度目を強請(ねだ)る、きのに。

 

きの。昨夜、奉行殿が。お前を、

抱きたい。と、(おお)せになってな」

「どうする。抱かれたいか」

少し驚いた顔の、きの

下を向いたまま、無言。

 

眞一郎が、「冗談、冗談」と、

言おうとした矢先(やさき)に。

 

「いいわよ」

「あたい。お(めかけ)さんより」

上手(じょうず)かも知れない」

 

予期せぬ、一言。

少なくとも、江戸に戻るまで。

三月(みつき)は、自分のもの

と、思っていた眞一郎。

かなりの衝撃である。

 

(つづく)

■登場人物の紹介は、適宜掲載。〈年齢は数え年〉

 ▶源平眞一郎。幼名「鰯丸」。

▶きの。佐助の縁戚の娘。

▶奉行。新任地の大阪西御番所に向かう奉行。

 

■本作品に登場する、地域・人物・組織等の名称

 及び写真・イラスト等は。フィクション作品につ

き、現存するものと無関係。

■また同様、法規的齟齬(そご)、言語や生活物資等の時代

考証の矛盾についても容赦を。

■特に、コミュニケーションツールの携帯(スマホ)やテレ

ビ、パソコン。交通手段の自動車や電車、飛行機

が無き時代を、念頭に。

■添削・校正なしでの配信につき、誤字脱字の程。

ご容赦を。

〈鰯の頭〉