鰯の頭のmy Pick
鰯の頭のセミナーでは、いつも余談話
を多用します。内外の昔話も多数。
「かぐや姫」の原型は。
日本最古の文学「竹取物語」。
かぐや姫が、竹林で発見されるプロロ
ーグシーンも神秘的だが。
帝の求愛を振り切り、月へ帰って行
く。エピローグもドラマ性が高い。
しかし、鰯には。
物語に登場する五人の皇子の行動が、
気になる作品。
皇子達は、かぐや姫にアプローチする
が、ことごとく失敗する。
その要因は、愚かな行動に起因する。
「かぐや姫」。鰯の頭のセミナーでは
活用度が満載の寓話の一つ。
「論理思考講座」の中で、「筋道を
邪魔する愚行」を紹介する際に、よく
引用する。
◆
おじいさんが山へ行くと、一本の竹が
輝いてました。
その光る竹を切ると中には、大きさが
三寸ほどの、可愛くて小さな女の子が
入っていました。
子どものいないおじいさんは、大喜び
で家に連れて帰りました。
おばあさんも大喜びです。
その女の子を自分の子どもとして大
切に育てる事にしました。
その美しい「かぐや姫」を、世の男達
は放っていません。
多くの若者達がおじいさんの家に来
ては、かぐや姫をお嫁さんにしたいと
言いました。
特に熱心だったのが、次の五人の皇子
達です。
石作皇子(いしつくりのみこ)。
車持皇子(くらもちのみこ)。
阿部御主人(あべのみうし)。
大伴御行(おおとものみゆき)。
石上麻呂(いそのかみのまろ)。
と、言いました。
みんな身分がとても高く、そしてお金
持ちです。
おじいさんは、かぐや姫に相談をしま
した。
「五人のお方は、みな、それぞれに立
派なお方たちじゃ。お前は、どのお方
がいいのかね?」
するとかぐや姫は、こう答えました。
「今から私が言う。世にも珍しい宝
物を探して持って来たお方へ、お嫁に
行きたいと思います」。
おじいさんは、五人の皇子達にかぐ
や姫の言葉を伝えました。
石作皇子どのには、天竺にある
《仏の御石の鉢(お釈迦様が使った
器)》を。
車持皇子どのには、東の海の蓬莱山
にある《玉の枝(根が銀、茎が金、実が
真珠で出来ている木の枝)》を。
阿部御主人どのには、もろこしにある
《火ネズミの裘(皮で作った燃え
ない布)》を。
大伴御行どのには、《竜の持っている
玉》を。
石上麻呂どのには、燕が生むとい
う《子安貝(タカラ貝と呼ばれる綺麗
な貝)》を。
それを聞いた五人の皇子たちは。
「何という、難しい注文だ。簡単に手
に入る品物ではない」と。
頭を抱えました。
そして。五人の王子達は。
石作皇子は、天竺に行って仏の御石
の鉢を手に入れる事は無理だと思い。
大和の国の、山寺で手に入れた古い鉢
をキレイに磨き上げ。
「遠い天竺から、やっと戻って来まし
た」と言って、差し出しました。
かぐや姫は、「この鉢は、仏の御石の
鉢ではありません」と、すぐに見破り
ました。
車持皇子も、蓬莱山には行かず、腕
の良い職人を集めて見事な玉の枝を
作らせ。持参しました。
偽物ですが見事な出来ばえに、かぐや
姫も暫く見つめていると。
そこへ、この玉の枝を作った職人達が
現れ。「皇子どの。玉の枝をお作りし
た代金を、早く払ってください」。
偽物だとバレた皇子は、恥ずかしそう
に逃げて行きました。
阿部御主人も、もろこしには行かず、
もろこしからやって来た商人から高
いお金で「火ネズミの裘」を買い
ました。
「もろこし中を探し回って、やっと手
に入れる事が出来ました」と差し出す
と。
かぐや姫は。
「本物なら火に入れても燃えないは
ずですよ」と言いながら、火の中に入
れました。
皇子は、「高いお金で買ったのだから」
と、自信満々でしたが、偽物の裘
は簡単に燃えてしまいました。
皇子は、商人に騙されていたのです。
四番目の大伴御行は、「竜の持ってい
る玉」探して航海に出ました。 とこ
ろが、嵐に出会い乗っている船が沈み
そうになったのです。
皇子は、嵐に向かって祈りました。
「竜神さま。どうか、お助けください。
わたしがあなたの玉を欲しがるから、
あなたが怒って暴れておられるのな
ら、もう二度と玉が欲しいなどと申し
ません。どうかこの嵐を、お静め下さ
い」。
すると嵐がやんで、皇子は何とか都へ
帰る事が出来ました。
しかし、玉を手に入れる事が出来なか
ったので、それっきりかぐや姫のとこ
ろへは現れませんでした。
最後の石上麻呂は、屋敷の軒先の
燕の巣の中に、光り輝く固まりを見
つけると。
やぐらを組ませて、やぐらの上からつ
るしたカゴに乗って燕の巣に手を入
れました。
「あったぞ。子安貝があったぞ。これ
でかぐや姫は、わしの妻だ」
しかし、あまりの嬉しさにカゴを揺ら
しので、紐が切れてしまいました。
高いところから地面に落ちた皇子は、
腰の骨を折る大けがです。
しかも、「子安貝」と思っていたのは、
ただの燕の糞だったのです。
皇子は、がっかりして、そのまま病気
になってしまいました。
こうして五人の皇子達は、誰一人。
かぐや姫をお嫁に出来ませんでした。
五人の皇子のような。
思考と行動をしている人達。
いますよね。
今でも。
(つづく)