鰯の頭のmy Pick

 

()の頭のセミナーでは、いつも余談話

を多用します。内外の昔話も多数。

 

「かぐや姫」の原型は。

日本最古の文学「竹取(たけとり)物語」。

 

かぐや姫が、竹林(ちくりん)で発見されるプロロ

ーグシーンも神秘的(しんぴてき)だが。

(みかど)の求愛を振り切り、月へ帰って行

く。エピローグもドラマ性が高い。

 

しかし、鰯には。

物語に登場する五人の皇子の行動が、

気になる作品。

皇子達は、かぐや姫にアプローチする

が、ことごとく失敗する。

その要因は、(おろ)かな行動に起因する。

 

「かぐや姫」。鰯の頭のセミナーでは

活用度が満載の寓話(ぐうわ)の一つ。

論理(ロジカル)思考(シンキング)講座」の中で、「筋道(すじみち)

邪魔(じゃま)する愚行(ぐこう)」を紹介する際に、よく

引用する。

 

おじいさんが山へ行くと、一本の竹が

輝いてました。

その光る竹を切ると中には、大きさが

三寸(9㎝)ほどの、可愛くて小さな女の子が

入っていました。

子どものいないおじいさんは、大喜び

で家に連れて帰りました。

おばあさんも大喜びです。

その女の子を自分の子どもとして大

切に育てる事にしました。

 

その美しい「かぐや姫」を、世の男達

(ほう)っていません。

多くの若者達がおじいさんの家に来

ては、かぐや姫をお嫁さんにしたいと

言いました。

特に熱心だったのが、次の五人の皇子

達です。


彼らの名前は。

 石作皇子(いしつくりのみこ)

 車持皇子(くらもちのみこ)

 阿部御主人(あべのみうし)

 大伴御行(おおとものみゆき)

 石上麻呂(いそのかみのまろ)

と、言いました。

みんな身分がとても高く、そしてお金

持ちです。

 

おじいさんは、かぐや姫に相談をしま

した。

「五人のお方は、みな、それぞれに立

派なお方たちじゃ。お前は、どのお方

がいいのかね?」

するとかぐや姫は、こう答えました。

 

「今から私が言う。世にも珍しい(たから)

(もの)を探して持って来たお方へ、お嫁に

行きたいと思います」。

 

おじいさんは、五人の皇子達にかぐ

や姫の言葉を伝えました。

 

石作(いしつくりの)皇子(みこ)どのには、天竺(てんじく/インド)にある

(ほとけ)御石(みいし)(はち)お釈迦(おしゃか)(さま)が使った

(うつわ))》を。

 

車持(くらもちの)皇子(みこ)どのには、東の海の蓬莱山(ほうらいさん)

にある《(たま)(えだ)(根が銀、(くき)が金、()

真珠(しんじゅ)で出来ている木の枝)》を。

 

阿部(あべの)御主人(みうし)どのには、もろこし(中国)にある

(伝説の)ネズミ(ねずみ)(かわごろも)(皮で作った燃え

ない布)》を。

 

大伴(おおともの)御行(みゆき)どのには、《竜の持っている

玉》を。

 

石上(いそのかみの)麻呂(まろ)どのには、(つばめ)が生むとい

う《子安(こやす)(がい)(タカラ貝と呼ばれる綺麗(きれい)

な貝)》を。

 

 

それを聞いた五人の皇子たちは。

「何という、難しい注文だ。簡単に手

に入る品物ではない」と。

頭を(かか)えました。

 

そして。五人の王子達は。

石作(いしつくりの)皇子(みこ)は、天竺(てんじく)に行って仏の御石(みいし)

(はち)を手に入れる事は無理だと思い。

大和(奈良)の国の、山寺で手に入れた古い鉢

をキレイに磨き上げ。

「遠い天竺(インド)から、やっと戻って来まし

た」と言って、差し出しました。

かぐや姫は、「この鉢は、仏の御石の

鉢ではありません」と、すぐに見破り

ました。

 

車持(くらもちの)皇子(みこ)も、蓬莱山(富士山説もある)には行かず、腕

の良い職人を集めて見事な玉の枝を

作らせ。持参しました。

偽物(にせもの)ですが見事な出来ばえに、かぐや

姫も(しばら)く見つめていると。

そこへ、この玉の枝を作った職人達が

現れ。「皇子(おうじ)どの。玉の枝をお作りし

た代金を、早く払ってください」。

偽物だとバレた皇子は、恥ずかしそう

に逃げて行きました。

 

阿部(あべの)御主人(みうし)も、もろこし(中国)には行かず、

もろこしからやって来た商人から高

いお金で「火ネズミの(かわごろも)」を買い

ました。
「もろこし中を探し回って、やっと手

に入れる事が出来ました」と差し出す

と。

かぐや姫は。

「本物なら火に入れても燃えないは

ずですよ」と言いながら、火の中に入

れました。

皇子は、「高いお金で買ったのだから」

と、自信満々でしたが、偽物の(かわごろも)

は簡単に燃えてしまいました。

皇子は、商人に(だま)されていたのです。

 

 

四番目の大伴(おおともの)御行(みゆき)は、「竜の持ってい

る玉」探して航海に出ました。 とこ

ろが、嵐に出会い乗っている船が沈み

そうになったのです。 

皇子は、嵐に向かって祈りました。

「竜神さま。どうか、お助けください。

わたしがあなたの玉を欲しがるから、

あなたが怒って(あば)れておられるのな

ら、もう二度と玉が欲しいなどと申し

ません。どうかこの嵐を、お静め下さ

い」。 

すると嵐がやんで、皇子は何とか都へ

帰る事が出来ました。

しかし、玉を手に入れる事が出来なか

ったので、それっきりかぐや姫のとこ

ろへは現れませんでした。

 

最後の石上(いそのかみの)麻呂(まろ)は、屋敷の軒先(のきさき)

(つばめ)の巣の中に、光り輝く固まりを見

つけると。

やぐらを組ませて、やぐらの上からつ

るしたカゴに乗って燕の巣に手を入

れました。

「あったぞ。子安(こやす)(がい)があったぞ。これ

でかぐや姫は、わしの妻だ」

しかし、あまりの嬉しさにカゴを()

しので、(ひも)が切れてしまいました。

高いところから地面に落ちた皇子は、

腰の骨を折る大けがです。

しかも、「子安貝」と思っていたのは、

ただの燕の(ふん)だったのです。

皇子は、がっかりして、そのまま病気

になってしまいました。

 

こうして五人の皇子達は、誰一人。

かぐや姫をお嫁に出来ませんでした。

 

 

五人の皇子のような。

思考と行動をしている人達。

いますよね。

今でも。

 

(つづく)