一つのキーワードから。

無限に広がる「妄想空想」。

あらすじはキーボード次第

 

⑫キーワード「島嶼(とうしょ)

 

午前8時。ホテルロビー。

ガイドの(ウー・)(ズー)が現れた。

彼女の横に。若いインドネシア人が。

どうやらアシスタント兼ドライバー

のようだ。

 

 

インドネシアは、一万を(はる)かに超える

島々からなる島嶼(とうしょ)国家。

日本では、観光地としてのバリ島が有

名だが。

主な島では、ジャカルタのあるジャワ島。

スマトラ島。カリマンタン島(ボルネオ島)。

スラウエシ島、など。

 

今日の予定は、ジャワ島内の木材会社

事務所、二ヶ所への挨拶。

明日と明後日は、カリマンタン島の(ばつ)

(さい)現場と一次加工工場の視察を予定。

 

 

今日、訪問する事務所は。ジャワ島の

東部、スラバヤにある。

スラバヤは、インドネシア第二の都市。

オランダ植民地時代から、貿易の中心

地。デビ夫人の夫、故スカルノ大統領

の故郷。

 

同じジャワ島ながら、ジャカルタとス

ラバヤは、陸路なら790㎞。

車を飛ばしても9時間の距離。

文夫らは、空路で。1時間30分。

 

昼前に着いた文夫に、ガイドの(ウー・)(ズー)

が、昼食がてらに少し街を案内した。

アラブ街や中華街があり、貿易都市に

相応(ふさわ)しい。異国情緒たっぷりの街。

ランチはジャワの定番の焼きそば「ミ

ーゴレン」と、甘辛いピーナツドレッ

シングをかけたサラダ「ガドガド」。

 

肝心の仕事は。

午後2時から4時までの(あいだ)

二つの会社の、二つの事務所を訪れ。

植林地と工場見学に対する「心付け」

を渡しただけだった。

いずれの事務所も、(ウー・)(ズー)流暢(りゅうちょう)

インドネシア語と美貌(びぼう)に満足の様子

であった。

 

 

翌日は予定通り、ボルネオ島に渡り。

チークの植林地と伐採現場を見学。

サマリンダに泊まり。

マホガニー材の加工工場を見学した。

後で分かったことだが。

マホガニーは、殆どが中南米産でイン

ドネシアは加工が中心。

 

マホガニーの木

 

インドネシアに来て6日目が。

終わろうとしている。

 

来てみて。渡航の意義に反省もあった。

だが。

これまでの自分への慰労と。新たな出

発記念として。この旅を意味付けした。

 

そして。

(ウー・)(ズー)の魅力に傾斜(けいしゃ)する。鼓動(こどう)の高ま

りに戸惑(とまど)い始めていた。

今夜は(ウー・)(ズー)と部屋で。食事をしよう。

彼女は承諾(しょうだく)すると。予感がした。

 

 

夕方。ジャカルタのホテルに戻ると。

フロント・インフォメーションに電報。

 

電報には「アユミキトクスグカエレ」。

 

文夫は直ぐに。博多の家に国際電話を

した。

 

*時代は、まだ携帯・スマホのない。

1987/昭和62年のことである。

 

 

(つづく)