日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科公式HPに掲載されていた、高橋巌の紹介記事です(2024年度末まで)。公式HPのリンク切れにより、ここに転載しておきます。転載にあたり、一部を修正しました。 2025.4.25

食ビの人々

書を読み、食と農の現場に出よう。
様々なことを体験し、色々な人の話を聞こう。

現在の研究内容について、わかりやすく教えてください。

「食」の源である地域農業と、それを支える地域経済のあり方について、「人」と「組織」の問題をベースにしながら研究しています。具体的には、農業を持続的に続けるための環境に配慮した有機農業や、高齢化が進む農村での高齢者の役割、農業協同組合(農協)の問題等を主たる対象とし、それを経営組織論などの手法で検討することです。

有機農業は、1980年代初頭の学生当時から関心を持ち現場で援農するなど、実践的に学んできました。一方高齢化の問題では、農業の現場で「高齢産業」というほど高齢者が従事する中、私はこの実態をポジティブに捉え、定年退職して農業を始める「定年帰農」の動きなどを調査した結果、地域で「元気な高齢者」が就農しローテションしていくシステムがあれば、高齢者主体でも地域農業は継承しうることを見出しました。そのためには、組織がしっかりと地域をマネジメントしていく体制が必要で、農協にも重要な役割があります。しかしこのところ農協は、協同組合という通常の株式会社と異なる法人・組織形態でありながら、政策的にその位置が歪められており、私はその問題点を追求し発言しています。さらに、TPP(環太平洋連携協定)や東日本大震災による原発事故の問題発生以降、行きすぎた市場主義・グローバリズムや、農林漁業と連動し持続可能な地域エネルギーなどの分析を深め、実証的な代替案を発表・発言しています。

現在の研究領域に興味を持ったきっかけは何ですか。

私が生まれ育ったのは「東京の田舎」でしたが、時代は高度経済成長期まっただ中。自身の成長に伴い公害と環境破壊を身を以て経験しました。多摩川など合成洗剤の泡で真白な死の川でしたし、畑や雑木林が切り開かれていくのを間近に見て育ちました。またこの時期は、急速に食料自給率が低下し、怪しげな加工食品や輸入食品、偽装表示が横行し、「食品公害」が叫ばれたときです。自然が好きで、中学生から各地の山を歩いたり自転車で旅したこともあり、食・農・地域・自然環境を大事にし、保全しなければならない、「何とかしなければ」といった問題意識が芽生えました。 そんな想いで当学科の前身・食品経済学科に入学、「農業経済学研究室(当時)」に所属して農村調査や学部農場での農業実習のほか、有機農家で援農をしたり、原発に頼らず農林漁業によって地域再生を図るイベントに参加・企画したりもしました。学部の卒業論文も、山形県の農村を自転車で一戸一戸農家を回る「聴き取り調査」により作成しました。

学生生活を終えた後は、実家に近い埼玉県の農協(JA)に就職し現場での実務経験の後、中央の農協系酪農団体に移り、酪農関係者だけでなく大手乳業メーカーなど食品産業の方々との実務に従事しました。同時に、霞ヶ関・永田町など日本の中心部で農業政策策定に関わる貴重な体験をしました。その頃「GATT」(当時の貿易ルールを決定する機関)の交渉が妥結し、米や乳製品など基幹的農産物まで貿易自由化の波にさらされるようになるなど、農業も世界も大きく動き出していました。しかし、このように行きすぎた貿易自由化は、食・農の現場にメリット以上の大きなダメージを与えます。現場の実態を踏まえると、私はそのことに今でも疑問を持ち続けていますし、私の研究の礎はここにあります。
その後農協共済の研究所に移り、一転、共済事業や高齢化の進む中山間地域などで農村の厳しい現実・実態を9年間調査研究しました。しかし厳しい環境でも、「元気な高齢者」の方々の農と食に関わる素晴らしい活動を見聞する機会が増え、これこそ高齢社会の中でのモデルである、こうした活動に光を当てようと考え、実態をまとめる研究を重ねました。この通算19年間の農協系組織での社会経験の後、本学に奉職しました。

以上のように私は、書斎でじっくり研究する時間より、食・農の現場を飛び歩く中から研究を積み重ねる時間の方が長かったといえます。それは今後も変わらないと思います。

研究の成果をどのように社会に活かしていきたいですか。

2005年4月に本学に着任しました。大学教員の重要な役割として、学部生や大学院生に対する研究成果の反映、すなわち「教育」があります。「研究と教育は車の両輪」なので、忙しい中でもその両立に努力しています。研究スタイルは、以前と基本的に変わっていません。現場に出向く調査研究をベースに、学会誌・専門誌などでの論文・研究結果の発表のほか、学会役員、団体・行政の委員や、時にはメディア出演等を通じ、社会に向けて調査研究成果を広く情報発信しています。

大学教員は、その本人の立ち位置によりますが、本来は極めてニュートラルで自由な立場のはずです。近年私自身は、経済・社会情勢の厳しさに対応し、調査研究成果などの情報発信・発言に力を入れています。これは、一般の人たちの代弁といったらおこがましいですが、社会的な発言や情報発信が大学教員の社会的使命と考えているからでもあります。

 

研究のやりがいや面白さを感じるのはどんな時ですか。

「未知の発見と社会貢献」。研究の面白さと目的は、究極的にこれに尽きるのではないでしょうか。それまで「通説」とされていたことを、自らの現地調査や資料・データの掘り起こしによって、新たな事実・事象や筋道を見出し、それを社会的に発表して、人々のよりよい生活に役立てていくなど貢献することです。もちろん、周囲に驚かれるような大発見などは、研究者の一生で滅多にないことですが、コツコツと調査研究を重ね小さな成果を積み上げていくことで、その目的は達成できると信じています。

反対に、研究で苦労する点、努力する点はどのようなことですか。

時間をどうつくるかですね。大学に限りませんが、世の中が大変忙しくなっている中で、研究を成立させるための苦労はここにあります。研究は、望むような資料・データがすぐ入手できたり成果が簡単に出ることは少なく、膨大な時間を要します。人から見れば、書店でぼーっとしていたり、無関係なネットサーフィンにしか見えない作業も、我々にとっては研究の一環だったりします。2016年、私は中央アジアで、経験が少ない途上国の現地調査に従事しましたが、言葉もわからずデータも入手できない中で本当に苦労しました。

無論、学生の皆さんに同じ目線で向き合い、講義・ゼミや実習・調査を通して時間を共有し、時に悩みを聞き喜びをともにする教育は、研究者としてのスキルアップと全く同義ですので、決して怠るべきではありません。さらに個人的には、自分を磨き社会性を発展させるために、様々な人たちと交流する趣味の音楽・アウトドアなども疎かにしないと決めているので、時間はいくらあっても足りません。

 

これから同じ専門領域を研究する学生に何を期待しますか。

ともかく「書を読み、かつ現場に出よう」です。「書を捨て」ではなく。ネットでもいいのですが、ネットだけではどうしても情報が断片的になりがちです。本は、著者の考えを広く体系的に眺められます。書店が経営的に厳しく数を減らすという本を手に取るのが難しい環境にあるので、学生の皆さんに我々もアドバイスをもっとしなければと思います。そして、食の現場でも農村でも、どんどん現地に行って様々なことに触れて体験し、色々な人の話を聞くこと。そして、それを自分の問題として考えていくことです。そうした体験・経験から、必ず学びは広く、深くなっていくはずです。

食品ビジネス学科を目指す学生へメッセージをお願いします。

「食」には様々な側面がありますが、それを多角的に学べるのが本学科の特色です。広大で緑溢れるキャンパスに、アットホームな研究室、統計資料室、専門誌にも取り上げられた調理実習室、各種実験室、耕種から畜産まで「農」全般を体験できる農場、食品加工実習所までを備え幅広く利用でき、「田植から調理まで」本格的に学べるカリキュラムを持つのは、【全国で本学科だけ】です。

私の担当する「食農教育実習」では、田植・稲刈りから、畑を耕して乳を搾り、食肉加工品をつくるところまで体験しますし、私のゼミでも、食・農の現場を訪問してヒアリングしたり、学生と教員でともに畑を耕し野菜をつくり、それをみんなで調理しています。身体で覚えたことは、一生忘れません。同時に、体験を発展させ深く学ぶため、「書」を読み込んでの座学も大事です。総合的な学びの場である本学科は、その両方の要素を兼ね備えています。是非、本学科を目指してください。ともに学び、ともに成長しましょう。

 

 

 大変ご無沙汰しております。管理人・高橋 巌です。  

 

  昨年11月に発表した拙稿: 高橋巌(2021)「食料自給率は向上できるのか?食料自給率を向上させる気はあるのか?」『月刊NOSAI』(全国農業共済協会)2021.11月号の全文を公開させていただきます。

 粗っぽい箇所が残りますが、直球勝負の論考です。お読みいただければ幸いです。

 転載をお認めいただいた同誌編集部に感謝します。(2022.2.11)

 

  高橋 巌@日大教員 です。

 このブログを活用する時がやってきました。もっと楽しい話をしたかったのですが・・残念です。

 

 私が理事の末席を務める日本有機農業学会では、家畜放牧中止に関して意見書を出しました。この件に関しまして、その問題点を皆様にもお伝えし、ご助力をお願いする次第です。

 問題の背景は以下のとおりです。
 今般、農水省が「飼養衛生管理基準」を改定することとなりましたが、これに伴い、豚熱・口蹄疫など家畜伝染病の発生時には、牛等を含む全畜種の放牧中止措置が含まれることが判明しました。
 しかも、パブリックコメントの締切が2020年6月11日(木)であり、かつ、省令改正に伴う運用開始が2020年7月1日という、あまりに拙速な対応となるものでした。

 しかし、我々や畜産関係者が主張するように、放牧を中止しなければならない緊急性や科学的根拠は存在しません。しかも、「中止」とはいうものの、放牧養豚などにおいては基本的かつ長期的に「放牧禁止」措置につながる極めて強制力の高いことが明らかになっており
ます。

 もとより、安全な食を求める関係者は、生産者・消費者の立場を越え、かねてより産直等による連携を行ってきたことは言うまでもありません。
 日本の畜産は、国土面積の制約等もあって放牧することが困難な環境ではあるものの、太陽の光を浴びて運動しながら健康的に育つ牛・豚等の生産を追求する生産者も存在します。
 具体的な形態は、放牧養豚や放し飼い養鶏、放牧酪農や山地酪農など多様な形態があります。そしてそのような生産者の生産物は、一部生協をはじめ心ある消費者組織・事業者との協同性により、生産の持続性を確保しております。

 しかし、事実上の「放牧禁止」などという事態になれば、豚熱の収束は程遠くその他の家畜伝染病の懸念もあるもとでは、放牧養豚農家では廃業が必至であるとともに、牛等までその影響が拡大すれば、日本から「家畜の放牧」そのものがなくなるという事態になりかねません。
 諸外国では、狭い畜舎の禁止や放牧の推奨は常識になりつつあり、アニマルウエルフェアの重視なども拡がりつつあります。
 しかるに今般の措置は、【唯一世界で、日本だけ家畜の放牧がなくなる】という最悪かつ異常な事態にもつながりかねないといえます。

 お読みいただいた皆さん方は、畜産との馴染みが薄い方々も多いとは思いますが、今般の事態の重大性を踏まえ、別添及び以下の記載事項をお読みいただき、ご協力ください。

 

1.農水省のHP該当ページは以下のとおりです。

 農水省「飼養衛生管理基準について」

 https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_shiyou/

 

2.パブリックコメントの締切は、2020年6月11日(木)です。ご協力をお願いします!

 農水省「家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令案の意見・情報の募集について」

 https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003113&Mode=0

 

3.農水省の担当は以下です。

 消費・安全局動物衛生課

 担当者:病原体管理班
 代表:03-3502-8111(内線4581)
 ダイヤルイン:03-6744-7144
 FAX:03-3502-3385

 

4.日本有機農業学会意見書は以下のとおりです(写真ファイル添付)。

 

5.反対のご助力いただける方は、以下のURLでのご署名をお願いします。
 【署名ページ:短縮URL】ページ移動をご確認願います
 「農林水産省は感染症予防対策としての家畜放牧禁止を見直してください!」
 https://ux.nu/lZHGP

 重ねて、ご理解・ご協力よろしくお願いします。

 

 高橋 巌(日大教員)

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 高橋 巌です。 

 

 2015年前後まで「研究室ブログ」として運用していた「高橋巌ブログ」(https://blogs.yahoo.co.jp/iwashizemi) を、Yahoo!ブログサービス停止に伴い、こちらに移行しました。

 このブログは以下のようなものです。いずれアクティブに再開することも検討しますが、当面は旧ブログのアーカイブとしてここに置いておきます。

 

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