カールおじさんの秋桜畑 | iware8940さんのブログ

カールおじさんの秋桜畑

   特別番

ウチは…どないしたんやろか。孔ちゃんを…ウチ孔ちゃんを置き去りにしてもうた…。

「舞子さぁぁん!!」

「はっ」

「どうした?」

「孔ちゃん…あっ…紀信が呼んでる」

「……紀信?」

「そうどす…」

「アイツは…まだ寝てるよ」

「エ?」

「まだICUだ」

ウチが寝てるベットからガラス越し、仰山の管に繋がれた孔ちゃんの姿が見えたんどす。

再び秋桜畑にて

「おいちゃぁん」

「そないな目で見んなや…心配せんでも」

「本当に聞こえてんの?あっちに」

「又疑うとるな?。ちぁゃんとあっちの耳に届いとる、ほな証拠見せたるっ」

おいちゃんは僕を出窓に呼んだ。

「なにぃ?」

「ホレっ…あれ見てみ」

おいちゃんが指差した先には少し色の濃い秋桜が風も無いのに一輪だけ揺れている。

「なんで?」

「あれはお前の母ちゃんの…夢種や」

「舞子さんの?」

「せや…たまたまそこにあった」

「本当?」

「邪魔くさいのっ」

散々僕が疑うので、おいちゃんはちょっと怒ったみたいだ。
出窓から右手を伸ばすと 花びらが一枚、すっと離れて空中を漂ってきた。

そして、指に挟んだピンクの花びらの表を僕に見せた。

「………舞子さんだ」

花びらから湯気がのぼったかと想うと、
それは舞子さんの横になってる姿に変わった。

「どしたの…舞子さん」

「見ての通りや」

「エっ?」

僕には何が何だか…。

「あんなに元気だったじゃない」

「せやから言うとるやろ…夢の中やって」

「じゃ僕は…」

おいちゃんは僕が振り返ると、僕の花びらはアレだと。無言で指差した。

「嫌だ…」

こっちが夢の中だなんて、信じられないよ。

「そいでも受け入れぇ、そやなかったら、ボンはずっとココの住人になってまうぞ」

「どうして?!」

「あらゆる壁は、とりあえず受け入れんと、何のええ方法も見いだせん」

「……受け入れる?」

「そや。」

「僕は、僕の夢種を見ればいいの?」

「自分の意思や」

込み上げてくるのは、とんでもない恐怖だ。

「ボン…無理せんでもええぞ?」

「ううん…僕も知りたいんだ」

「ほぉ…男らしい」

おいちゃんが珍しく関心している。

「僕の…どれ?」

「あぁ。アレや」

おいちゃんは小さく区切られた花壇を指差した。

「僕のは…どうして花壇なの?」

他の小さな秋桜たちも、同じ花壇に…。

「そやない」

おいちゃんがひとこと言うと。花壇の隙間にぽっと新しい夢種が現れた。

「子供の夢種は宇宙に瞬く彗星のようなもんや」

「彗星?」

「突然生まれて、突然消える儚さと、ぶつかり合って更に新しい星を生み出す神秘を持っとる」

「…難しいや」

「大人になったら…っても分からん奴は分からへんか」

「大丈夫!ぼっ僕は勉強するから」

「ほぅか」

「でも、おいちゃん凄いや」

「…褒めんなや、照れるわ」

「だって…科学者みたい、見かけによらず」

「余計なセリフ挟むなや…有頂天になられへんやんか」

おいちゃんは又若くなった頬っぺたを赤らめた。

「ちなみに、ワテの知識は三百年かかって培ったもんや」

「大丈夫…僕はそんなにかからないから」

おいちゃんはニコッとした。そして。

「おい!ボン!ワテからこうてる場合か」

「あっそうだ」

又すっかりおいちゃんペース。

「ほな、呼ぶでええな」

「ぅん…はい」

おいちゃんが右手を空中に伸ばし、僕の花びらが宙を漂った。ゆらゆら頼りなくて、今にも消える彗星に見えた。

おいちゃんが指に挟んだ花びらを僕の前に持ってくると、さっきみたいな湯気がのぼった。
それがみるみる形になってく………。

「これ……僕」

「ボン…」

どんどん涙が流れた。 真っ白なシーツに包まってる。
誰も傍に居なくて淋しそうだよ。

「堪えられるか?」

「僕…死んじゃうの」

全身から力が抜けてく。 ホントに…ホントに?。 僕は夢の中に居た。





続く