カールおじさんの秋桜畑
三百年…て。
いったい、おいちゃんは何言ってるの…。
「ココでのワテは…こないな小綺麗な格好させて貰うとるが、これがほんまの姿や」
おいちゃんは一瞬で白い煙に包まれると再び現れた。だけど煙が晴れて目の前に居たのは全然知らない白髪の老人だった。
「………おいちゃん?」
「もうこうなったら無理して呼ばんでええ」
「…どして」
「ボン」
「…うん」
「ワテは生きてるうち…ろくに人助けもせんと、悪さばかりしてたんや」
「………」
「ところがな、たった一度だけ死のうとしていた親子を踏み止まらせたことがあってな」
「……」
「ほんまなら地獄に堕ちるとこ、閻魔様の計らいでココにおることになったんや」
「悪いこと?……何をしたの?」
「それ言うたらワテに近づけんようになるぞ」
その言葉を口にしたおいちゃんの顔に深い影がかかった気がした。
「冗談や…もう、そんな悪さに興味はない」
「三百年も独りって…淋しかったんでしょ?」
「泣かせるやないか…」
おいちゃんはほんの少しだけ言葉に詰まった。
「ボン…」
「う…はい」
「ワテがこれまで守ってきた秋桜はな、ただの花やないんやで」
「…何が違うの」
「平たく言うたら夢の中やさかい、枯れることは無い想うやろ」
僕は返事をせずただ白髪になったおいちゃんの目だけ見つめた。
「もし…この一輪一輪が下界に居てるヒトの夢の種やったとしたら、どないや、」
僕はただまっすぐ強く見つめた。
「これ一輪が枯れるか消える時、ひとりのヒトの夢の種が消えて無くなるワケや」
「そしたらどうなるの」
「その為にワテがおる」
「……」
「折れそうになったら支え。枯れそうになったら聖水をやり。そして残念にも枯れてもうたら…又育て直しや」
「夢って…寝てる時にみる夢?」
白髪のおいちゃんは穏やかに笑って、頷いた。 今までとはまるで別人だった。
「正直言うてワテはずっと、ココにおっても構わへん想うとった…。やけど、ボンらと出会うてしもてから…もいっぺん下界に下りてみたくなってしもてなぁ」
「あっ…」
白髪だったおいちゃんがみるみる若返って、顔の皺も…薄汚れた着物も洗い立てのように光った。
続く
いったい、おいちゃんは何言ってるの…。
「ココでのワテは…こないな小綺麗な格好させて貰うとるが、これがほんまの姿や」
おいちゃんは一瞬で白い煙に包まれると再び現れた。だけど煙が晴れて目の前に居たのは全然知らない白髪の老人だった。
「………おいちゃん?」
「もうこうなったら無理して呼ばんでええ」
「…どして」
「ボン」
「…うん」
「ワテは生きてるうち…ろくに人助けもせんと、悪さばかりしてたんや」
「………」
「ところがな、たった一度だけ死のうとしていた親子を踏み止まらせたことがあってな」
「……」
「ほんまなら地獄に堕ちるとこ、閻魔様の計らいでココにおることになったんや」
「悪いこと?……何をしたの?」
「それ言うたらワテに近づけんようになるぞ」
その言葉を口にしたおいちゃんの顔に深い影がかかった気がした。
「冗談や…もう、そんな悪さに興味はない」
「三百年も独りって…淋しかったんでしょ?」
「泣かせるやないか…」
おいちゃんはほんの少しだけ言葉に詰まった。
「ボン…」
「う…はい」
「ワテがこれまで守ってきた秋桜はな、ただの花やないんやで」
「…何が違うの」
「平たく言うたら夢の中やさかい、枯れることは無い想うやろ」
僕は返事をせずただ白髪になったおいちゃんの目だけ見つめた。
「もし…この一輪一輪が下界に居てるヒトの夢の種やったとしたら、どないや、」
僕はただまっすぐ強く見つめた。
「これ一輪が枯れるか消える時、ひとりのヒトの夢の種が消えて無くなるワケや」
「そしたらどうなるの」
「その為にワテがおる」
「……」
「折れそうになったら支え。枯れそうになったら聖水をやり。そして残念にも枯れてもうたら…又育て直しや」
「夢って…寝てる時にみる夢?」
白髪のおいちゃんは穏やかに笑って、頷いた。 今までとはまるで別人だった。
「正直言うてワテはずっと、ココにおっても構わへん想うとった…。やけど、ボンらと出会うてしもてから…もいっぺん下界に下りてみたくなってしもてなぁ」
「あっ…」
白髪だったおいちゃんがみるみる若返って、顔の皺も…薄汚れた着物も洗い立てのように光った。
続く