カールおじさんの秋桜畑 | iware8940さんのブログ

カールおじさんの秋桜畑

「もういいでしょ?舞子さん」

ふたりは互いに背中を向けて黙っちゃった。

「ねぇふたりともぉ」

「ボン、」

「……なに?」

「今日は帰れ」

「う、うんわかった」

「又来い」

「うん!!」

「ウチもおいとまさせて貰いますえ」

「………」

あぁあ。舞子さん、本気でおいちゃん怒らせてしまったみたい。僕にはおいちゃんが何であんなに怒っちゃったのか、全く分からなかった。
帰り道、カワセミの川に通じる上流に沿って下った。無言で歩く舞子さんは何かをずっと考えているようだった。

「ねぇ舞子さん」

「…何えぇ」

「あの紙に何が書いてあったの?」

「カールはん、嘘ついてはったんどす」

「うそ?」

「そうどす。」

「おいちゃんが何うそついたの?」

「名前どす、ほんまの名前は西岸 薫いう名前どした」

「え?何で舞子さんが知ってるの」

「それがウチにもょょう分からへんのどす。あんヒトに興味が湧いたぁいうんか…そしたら手の中にあったんどす」

舞子さん自身がワケが分からない。とぉっても、複雑な顔をしていた。

「僕ら…おかしいよね」

「え?」

「だって………」

僕らの歩む先。
たった一本、柿の木がそびえ立っていた。僕にはその木から柿をいっこ、いっこもぎって川に流すおいちゃんの姿が浮かんで見えたんだ。

「どないしたん?」

「舞子さん」

「おいちゃん、僕に…ヒント教えてくれたんだ」

「どういうことどす?」

「僕に答えが見つかりやすいように…柿」

「柿が?…あっこの柿」

「それ流すおいちゃんが見えた」

「見えたって?」

「僕たち…変だよね」

舞子さんと僕は、長くまっすぐ伸びた川に沿って、無言のまま…歩き出した。

(秋桜畑にて)

「西岸 薫…何百年ぶりに聞く名前や」



続く