皆さん、こんにちは~

早速ですが…私、ブログで自作小説を公開します。

タイトルは『年鑑 フューチャー・ウォーカー』です。



本作はSF(サイエンスフィクション)を盛り込んだコメディ作品です。
舞台は1998年、都内近郊のとある街、男子大学生の住居に突如、
謎の女性が訪ねてきます。彼女は24世紀から来た未来人で、
ひょんなことから、男子大学生とひとつ屋根の下で暮らすことになります。

 

それでは、本作の第1話を公開するのでお楽しみください~!

 

年鑑 フューチャー・ウォーカー

WEEKLY 1st 「未来人ですが何か問題でも?」

 

≪1≪

 

 時は1998年8月19日。舞台となる場所は、東京郊外のニュータウン<清水塚町しみずづかちょう>、1970年代に再開発された中小都市である。

 人口は約20万人。近くに空港があり、公共交通機関は私鉄・バスの他、モノレールがある。治安は良い方で、比較的安住の地とされる。

 残暑の時期、ようやく涼しさを感じ取れる夜の時間、町は平和そのものかと思われたが、何か胸騒ぎがした。

 

<清水塚町>区域の大きな公園、中央部の噴水広場は待ち合わせ場所では、夜になっても、ベンチでいちゃつくカップルの姿があった。

 現在、公園の時計の針は、午後10時8分を指していた。

 公園近辺には丘があり、それは元々、高山だったが、再開発の影響で山肌が削れていき、すっかり小さくなっていた。

 また、丘には一軒の家屋があり、老夫婦と雑種犬1匹が住んでいる。裏庭にはミカンの木が植えられており、実れば、いたずらっ子やカラスが狩りにやってくるのだが…

 

「ピカ!」

 突然、丘の中で青白い閃光が走った。その時間、天候はよく、雷が落ちたわけでもない、怪奇現象なのか、原因は現在の科学では解明できない。

 そして…

 

「………」

 謎の閃光が走った場所に人影があった。

 その正体は若い金髪の女性。彼女は無表情のまま辺りを見渡して、ゆっくり歩きだした。謎の女性の服装は、特撮ヒーローの衣装のようで、実に異様であった。

 さらには…

 

「現在の時刻と位置情報を教えて…」

[1998年8月19日、時刻は22時…まもなく9分、場所は東京都南西部エリア、<清水塚町>です…]

 謎の女性の連れは、2頭身、青色のダルマのような物体だった。見た目は可愛いが、気品ある大人びた女性の声を発していた。2人は丘を抜けようとするが…

 

「ウ…ワン…ワァン!」

 丘中の古家に住む雑種犬が不審者に気づいて、激しく吠えだした。すると、不審者扱いされた2名は慌てて逃げていった。

 

「…びっくりした…他に着地できる場所はなかったの?」

[現在の場所が着地場所ジャンプポイントに適しています…私の計算ですと…]

 

 謎の女性は、青いダルマの屁理屈を聴きながら公園を散策するのだが…

 

 公園にいた地元住民は、謎の女性と青いダルマを見て、驚きのあまり絶句していた。

 

「あの…ちょっと道をお尋ねします…野比坂一刻のびざかかずときさんのお宅はどちら?」

「え…!?」

 通行人の1人の男性は謎の女性に道を尋ねられたが、返答する余裕がなく、困惑して体が固まっていた。

 謎の女性は道を訊こうと、住民に歩み寄るが、皆、彼女たちを恐れて逃げるように去っていった。

 気づけば公園には、謎の女性と青いダルマしかいなかった。

 

「…何よ失礼ね、もう、あんたに頼るしかないわ」

 謎の女性はそう言って、じっと青い達磨を見た。

 公園近くには私鉄やモノレールの駅の他、バス停、タクシー乗り場と交通機関の領域が集中している。夜になれば、日が昇っている頃の賑わいはなく、残業や大人の付きあいで遅く帰宅する者ばかりである。

 謎の女性は駅前を抜けて、住宅街の方を目指すが…

 

「何じゃありゃ?」

 1人の帰宅中のサラリーマンが、謎の女性たちを不思議そうに見ていた。彼の顔はトマトのように赤く染まっており、酒臭く千鳥足の状態だった。典型的な酔っ払いだということは一目瞭然だ。

 

「あの…何か?」

 酔っ払いの男は謎の女性に興味があるようで、ふらふらと近づいてきた。

「ねえちゃん、変な恰好してるけど…美人だね~ヒック…」

「それは褒めてくれてるのね?ありがとう…やっと、会話できたわ」

「ヒック…一緒に飲まないか?うちに来なよ、ね~」

「…ごめんなさい、私急いでるの」

ボーリングの球なんか持っちゃって…おじさんと勝負するか?」

[…私はボーリングの球ではありません]

 謎の2人組は酔っ払いの絡みに付き合えず、その場を去ろうとしたが…

 

「ちょっと待て、これも何かの縁だ、付き合えよ…酌してくれよ~」

 謎の女性はしつこい酔っ払いに嫌気が刺していた。その時の対処方法は…

 

 何を思ったのか、謎の女性は自身の利き腕を酔っ払いに差し出した。彼女は特殊な腕輪を装着しており、それは妖しくい光りだした。すると…


 

「あれ?」

「あの…大丈夫ですか?」

 酔っ払いの男は、いつの間にか路上で寝ており、巡回中の警官に起こされていた。

「何でこんな所で寝てたんだろう?」

 酔っ払いの男は何故か、謎の女性のことが思い出せず、酔いが覚めていくと独り寂しく帰宅した。その一方で…

 

 謎の女性は住宅街で、〝野比坂一刻〟という人物の家を探していたが…

 

「…ちょっと、お嬢さん、こんな時間に何やってるんですか?」

 謎の女性に声を掛けたのは、1人の老男性であった。

「え…知り合いの家を訪ねて来たんだけど…あなたは?」

「この町の町会長です、パトロールをしている…最近、非行に走る若者が増えてきたと耳にするが…君もその部類たぐいじゃないだろうね?」

「いいえ、違うわ」

 町会長は謎の女性を不審に思い、警察のような態度を見せた。

 

「…君、歳はいくつだ?」

「…63だけど」

「大人をからかうな!とても同世代とは思えん、20代…10代でもおかしくない」

「あら、この地域まちの人ってお世辞が上手いのね」

 町会長は謎の女性の返答で調子が狂いそうになった。

 

「その変なボールは何だ?夜分遅く、誰の家を訪ねるつもりだ?」

 謎の女性は質問攻めに遭うが、素直に返答した。

「これはボールじゃなくて…あの、野比坂一刻って人を知ってる?」

「ああ、野比坂さんとこの坊やか、彼との関係は…恋人とか?」

「ただの友達よ、道に迷っちゃって…住んでる場所を教えてくれない?」

「…一刻君はこの先の商店街に住んでいる、1階は喫茶店で2階がアパートでな…」

「そう、教えてくれてありがとう」

 町会長は謎の女性に道を教えるが、いくつか気になることがあった。



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