ほっこりと心あたためるエッセイ
『すべてきみに宛てた手紙』・長田弘
長田弘さんの詩やエッセイがとても好きだ。深く、豊かな言葉で綴られる詩の世界。それからエッセイ集。『世界は一冊の本』や『読書からはじまる』など。退職する頃から、前立腺癌、膀胱癌(3回)……と、入院・手術を繰り返してきた。その間、ベッドで励ましてくれたのが、長田弘さんの本だった。
『手紙』の中のこんな言葉。
――読書するとは、偉そうな物言いをもとめることでも、大それた定理をさがすことでもなく、わたしを一人の「私」たらしめるものを再確認して、小さな理想をじぶんで更新するということです。
どんな時代にも、ひとが本にたずねてきたものは、けっして過剰なものではなかったはずです。わずかなもの。一冊の本のおおきさほどの、小さな理想です。――
長田さんは2015年5月に亡くられたが、この本は2,022年4月に出されている。谷川俊太郎さんが「魂への入口」という献詩を寄せている。
『すべてきみに宛てた手紙』ちくま文庫 2022年㋃ 720円+