図書館ができること!

『小さなまちの奇跡の図書館』

猪谷千香

ちくまプリマ―新書23年1月発行!

800円+

 読み始めたら引き込まれて一気に読んでしまった。「ちいさなまち」とは鹿児島県指宿市。指宿図書館と山川図書館がある。15年前、指定管理者制度が導入されて、市民のNPO法人「そらまめの会」が立ち上げられて名乗り出た。それからの歩みが語られている。2021年には「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー 2021」を受賞した。

 「あんたたちはすごかねー! 図書館は、まちの宝だけど、あんたたちが宝じゃいが! 体には気をつけなさいよ」と、利用者は、この快挙を喜んでくれた。

 自分たちは「ばっけもん」なんだと。鹿児島の言葉で「粗野、大胆にして楽天的で天真爛漫な者」。「人生賭けるしかない。だから、ばっけもん」。

 ついには、1,000万円を集めて、移動図書館「ブックカフェ号」を実現させる。

「図書館で待っているのではなく、図書館に来られない人たちにも本のある空間を届けたい。本を媒体にしてそこで生まれるコミュニケーションを楽しんでほしい」という思いを託したものだ。

 私たち「読書のアニマシオン研究会(アニマシオンクラブ)」も、何度も訪れてきたし、その活動を見てきた。大きな大きな拍手を贈りたい。「一人で考えているうちは夢。二人で語れば力。三人集まれば実現する」と。夢を語ることの少ない時代に、熱く励まされる本だ。年の初めにぜひ読んでください。

 そうそう、鹿児島の読書運動には長い背景があることを、筆者は綴っている。県立図書館長として「母と子の20分間読書運動」などを提唱し読書運動を進めた椋鳩十さんの役割も大きい。

 写真の後ろにはるか富士山が見えているんですが、わからないでしょうね。