3月29日(金)曇り 「十日間の読書」④ 三宮麻由子『鳥が教えてくれた空』

 

 今日はぐっと寒い日だった。まさに「花冷え」。朝の善福寺公園の散歩もまだ1周がやっとというところだが、手袋がほしい感じだった。アニマシオンクラブの仲間で、機関紙『ファンタジスタ! 93号』(4月1日号)を発送した。

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 三宮麻由子さんの『鳥が教えてくれた空』(集英社文庫2004.8)は娘が入院のお見舞いに差し入れてくれた本。寝たまま読む時間が長くなるので、文庫は疲れなくていい。このブログでも、『そっと耳を澄ませば』、『世界でただひとつの読書』などを紹介してきた。

「私は四歳のときに、一日にして失明した」。

「どんなに頑張って進学や就職の夢を実現しても、心の奥深いところに「目が見えないという現実」が厳然としてあり、パンドラの箱を隠した「開かずの間」がずっと残っていた。そして、その開かずの間を開くカギをくれたのが、野鳥だった」と「はじめに」で書いている。

 今回のテーマは、鳥の声を(探鳥会などに参加するようになって)聞くことによって、森の深さ、空の広さなど、空間の認識ができるようになって、街にいても、職場にいても奥行きを感じとることができるようになり、それまでとは異なる世界の中の自分を捉えられるようになった。

「たしかにこれまでにも私は、音楽の世界を見いだしたり、語学や文学を長期間学ぶなどしてさまざまな世界をかいま見てきた。しかし、そんなことで満足している場合ではなくなったのだ。音楽も本も言葉もすべて私のペースで動かせるもの、言い換えれば、それ自体は静止した対象物にすぎなかったのだ。だから、これらを学ぶことで精神は深まったが、自然のなかに組み込まれた生物としての私の生の実感という基本的な世界観が欠如していた。

 野鳥を知ったとき、私はそうした静止物ではなく、この瞬間にも動き、移り変わっている自然界に飛び込んだのだった。自分の手につかめる「入ってくる」世界から、宇宙の大きなペースで流れる世界に「入っていく」。それは世界観を完全に覆す大事件となった」

――これが、今回のテーマとなっている。「鳥が教えてくれた空」のタイトルはピタリだ。

 世界を見る目、心が広く、深くなっていく…、三宮さんの本を読むと、いつも思うことだ。