12月5日(水)曇り 道徳と読書51 

「C12 規則の尊重」①世界人権宣言と日本国憲法

 第3の領域は、「C 主として集団や社会との関わりに関すること」です。そのスタートは、「12 規則の尊重」。「法やきまりの意義を理解したうえ上で進んでそれらを守り、自他の権利を大切にし、義務を果たすこと。」(高学年)となっています。ここで大事なことは、「法やきまりの意義を理解した上で」というこの項目の“前提”となっている事柄です。実際の授業では、「きまりの意義」は説明されずに、それはもうわかっていることだから…と、守る方に指導の力点がいくことが多い。

 8社66冊の中で、唯一、権利の切り口から「規則」を考えるよう呼びかけている教科書がある。光村図書の6年教科書は、第1教材に「まどさんからの手紙―こどもたちへ」を掲げている。まど。みちおさんが、出身の小学生からの手紙に答え、「いま せかいじゅうに たべものがなくて しにそうな人は かぞえきれないほどいます。あっちに こっちに せんそうもたえません。それどころではなく にんげんでない ほかの いきものたちは まいにちのように どんどん そのかずが へっていきつつあります。」と憂い、「みんな いまの おとなの ちからでは なおしきれないのです。こまっているのです。」と、こどもであるみなさんに期待すると表明したものです。これを全文掲載紙しています。

 そして、第2教材で、「世界人権宣言から学ぼう」と、谷川俊太郎訳の30条を全文消化しています。単元名は「大切な権利」。

 「考えよう」(学習の手引き)もおもしろい活動を提案しています。

●あなたのクラスの「クラス人権宣言」を作るために、世界人権宣言の条文を一つだけ使うとしたら、あなたは何条を使いたいと思いますか。また、それはなぜですか。

●「人には、自由に意見を言う権利がある。だから人の悪口を言ってもいいんだ。」という人がいたとします。その人に、世界人権宣言でいわれていることを使って反論しましょう。

・・・

 私はここで、「だから、光村図書を使いましょう」と呼びかけているのではありません(笑)。

 光村図書を含め、8社に共通しているのは、日本国憲法に触れているところがないということです。これは、不思議でなりません。私たちの権利の基礎は、日本国憲法にあります。そして、太平洋戦争の反省に立って、「平和的で文化的な民主国家」を建設しようとして、世界の人々に向かって誓ったものです。井上ひさしさんが力を尽くして、子どもたちに語り伝えた『井上ひさしの 子どもたちにつたえる日本国憲法』(講談社2006年、952円)は、教室で語るときのとてもよいガイドブックです。憲法の前文は、ぜひ声に出して読んでください。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

 われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」

 前後を略しましたけれども、日本国憲法に、私たちの道徳性の基礎があると思います。「規則の尊重」を言うとき、憲法に触れていないことは、とてもふしぎなことです。