10月19日(金)曇り一時雨 希望と勇気④『ピートのスケートレース』

 「希望と勇気、努力と強い意志」というテーマにぴったりの中~高学年絵本。

1941年12月。オランダはナチスドイツの占領下にあった。10歳になるピートの住むスラウスも運河の発達した街であり、冬はそこでスケートをすることが市民の楽しみになっている。これはナチスといえども禁止できない。この本の語り手はピートだ。

 ある日、じいちゃんが肩に手を置いて語りかけた。

「ピート、おまえは強くて立派なスケーターだ。機転もきく。おまえなら、この重大な仕事をまかせられる」と。

 ナチスににらまれ連行された知り合いの家の二人の姉妹をベルギーのブリュッセルのおばさんの家に避難させることにした。それを気がつかれないように、3人の兄弟が運河をスケートで遊んでいるように見せかけながら逃がそうという計画だ。

 途中ではドイツ兵の検問にかかる。そうした危機を乗り越えて、ピートはこの大役を果たす。まさに、わくわくと読み進める「勇気ある少年」の物語だ。絵が、3人の少年少女の緊張した表情などをていねいに描いていて見ごたえのある絵本になっている。絵本が幼児だけのものではないことを納得させてくれる。

 ルイーズ・ボーデン作 ニキ・ダリー絵、ふなとよし子訳『ピートのスケートレース』(福音館2011)