中学生作家=『さよなら、田中さん』

 5月25日(金)晴れ 同世代を共感深い描写

 

 中学生、高校生の活躍が目覚ましい。その一角を担うのが、鈴木るりかさんだ。図書館の隣に住んで小さいころからの読書家。こう聞くとなんだか「孟母三遷」を思う。アニマシオンクラブシニアの月例「銀読書会」、5月24日はその著『さよなら、田中さん』(小学館2017年、1200円)をテキストにした。

 はじめは「フン、フン…」という気持ちで読んでいたが、次第に引き込まれ、結びのどんでん返しの章「さよなら、田中さん」では、うるうるっときてしまった。もし、演劇なら大いに拍手を送っていることだろう。

 顔を知らないうちに離別した両親。母は父のことは語らない。主人公田中花実(6年生)はふと、父親は犯罪者で身を隠しているのではないかと思ったりする。ここはよくある「不幸な生まれなのは、ひょっとしてさる王家の生まれなのではないか…という願望の裏返しのような。母はまさに「女手一つで」娘を育てている。建設現場で汗振り払って働いている。このあたりの家庭と母・子の描写は何ともすごい。リアルというか、激しい。これが中学2年生女子の描写かという思い。

 しかし、作者の同世代を見る目は確かで、甘くならず、上から目線にならず、水平的な、共感深い目線だ。まず、そこに感心した。

 最後の章は、花実とは真逆の立場の中流家庭、お受験に追われる少年が語り手となる。母の期待に沿えず、遠い山の中の全寮制学校に行く。彼から見た田中花実が描かれる。それがまたいい。「さよなら、田中さん」の表題はいったい何を意味するのか、ソシエT、この話はどういうエンディングで結ばれるだろう…という思いが、かなりどんでん返しのような、いや巧みな語り手の交代によって閉められる。若い世代に期待したいと、すごくうれしい読書会だった。