11月28日(月)曇り 長倉さんの「地球の色」⑤=〈黒〉

 

長倉洋海さんの『世界は広く、美しい』。ラストの第5巻は〈黒〉。

――黒は心を全開にし、わずかな光を感じとるための色だ――

「私は出会いと経験を重ねることで、闇の中でもわずかな光を感じとり、無音の中でかすかな「音」を拾いあげ、「漆黒の黒」からも希望を感じとる力をもらってきたように思う。」

 「黒」でどんなイメージを持ちますか? もう10年ほど前になるが、札幌の近代美術館の「参加型展示」を参観したことがある。その中に、「ここで見たことは決して話さないでくださいね」と書かれた絵画があった。それは後ろ向きに展示されていて、こちら側にその札があった。そして、後ろに回ると、キャンバスはただ真っ黒だった。題して「闇夜の鴉」。しかし、そういうのであれば、必死に目を凝らして、一面に塗られた黒の色調の微妙な変化を見分けようとした。

 私たちの身の回りから「闇」が消えたと思ったのは、昨日までの静岡市梅ヶ島温泉の先輩の山荘に泊ったときのこと。夜になると本当に「闇」。「闇」は政治の世界にのみ残るのかもしれない。

 長倉さんは、もう一つ、「黒」の象徴として「瞳」をあげている。「くっきりとした黒い瞳に魅かれる。その瞳の奥にさまざまな世界が映し出されているからだろう。」

 さて、長倉さんは、赤、青、緑、白、黄、黒の5色でこの世界を提示して見せてくれた。

「色はだれにでも、おなじようにふりそそぎ、だれもが自由にうけとり、ひきだすことができる。世界にはたくさんの色があふれている。瞳の奥にのこる色、心にきざまれた色、あなたはどんな色をえらび、どのような旅をつづけるのだろう。」

この手法はとても刺激的だ。あるテーマに誘うアニマシオンを考えさせてくれる。よし、秘湯浮かんだぞ!

長倉洋海写真集『世界は広く、美しい 地球をつなぐ色』(全5冊 、新日本出版社2016.9、各2,300円)