10月24日(月)晴 谷川さんの『こころ』詩集

 

「毎日新聞」の連載したものをまとめた、「こころ」をテーマにした詩集。2013年1刷。2015年1月5刷。そのときどきの「心模様」を描く。

 谷川さんは私の一回り上の「ひつじ年」。ちなみに小室等さんが私と同い年。だからなんだ・・ですが。次第にここで書かれている〈老境〉の心境を共有できる年齢になったということを読みながら思った。もちろん、そのような詩ばかりではないが。

「問いに答えて

 

悲しいときに悲しい詩は書けません

涙こらえるだけで精一杯

楽しいときに楽しい詩は書きません

他のことして遊んでいます

 

詩を書くときの心はあだやか

人里離れた山間のみずうみのよう

喜怒哀楽を湖底にしずめて

静かな波紋をひろげています

 

〈美〉にひそむ〈真善〉信じて

遠慮がちに言葉を置きます

あなたが読んでくだされば

心が活字の群れを〈詩〉に変える        」

 楽しい詩がある。子どもと声に出して遊びたい。

「  こころ ころころ

 

こころ ころんところんだら

こころ ころころころがって

こころ ころころわらいだす

 

こころ よろよろへたりこみ

こころ ごろごろねころんで

こころ とろとろねむくなる

 

こころ さいころこころみて

こころ ころりとだまされる

こころ のろのろめをさまし

 

そろそろこころ いれかえる    」

 何か重く、思い淀んだ時、この詩を口ずさむと、「そろそろこころ いれかえる」ことができるだろう。

 最後に置かれている詩が好き。

「  そのあと

 

そのあとがある

大切なひとを失ったあと

もうあとはないと思ったあと

すべて終わったと知ったあとにも

終わらないそのあとがある

 

そのあとは一筋

霧の中へ消えている

そのあとは限りなく

青くひろがっている

 

そのあとがある

せかいに そして

ひとりひとりの心に        」

 朝日新聞出版1200円