10月19日(水)曇り 持つべきものは友=『永六輔の伝言』

 

 「将を見るには馬を見よ」という言葉があり、「人見るには、その友を見よ」と言う。永六輔さんは、背筋をぴんと伸ばし、自分の発言、生き方をしっかり貫いてきた人だ。今年7月7日に83歳で亡くなられた。反原発集会などには車椅子で挨拶されていた。

 永さんを「育てた」人に、三木鶏朗がいる。永六輔の才能を評価し、信じてふさわしい仕事を任せては励ましてきた。中村八大、坂本九、淡谷のり子…、昭和の輝かしい人々との交流を語り伝えている。美空ひばりの反戦歌「一本の鉛筆」のエピソードなども感銘深い。

「昭和御三家」の小沢昭一、野坂昭如との話もおもしろかった。この『仲良し三人組』みたいに見えていた仲間は、実はそれぞれが個性派、自由人で、舞台を出たらまったく別行動。目的地に行くのもばらばらだったとは…!

 これは、もう親友である矢崎泰久氏が聞き書きの体裁をとって、「僕=永六輔」の語りとしてまとめたオマージュだ。まさに、持つべきものは友。

 私は、もう25年余り前に、千駄木の日本青年会館を会場に半年ずつの連続講座として開かれた「永六輔市民大学」に通っていた。そして、暮れに行われた「永六輔新宿寄席」にも通ってきた。とてもおしゃれ。そしてサービス精神に満ちたエンターテーナー。始まる15分前には緞帳の前で、前座として語りはじめる。同じ話は二度しない。

わが友K井さん(あっ、笠井さん、ごめん。変な書き方で…)と、暮れはこれを楽しみに飲んで、「行く年来る年」を話し合ってきた。その多くは実現してきたのだから、これも永さんのおかげだ。

 若い人にはおもしろくはないだろう。「戦後」という時代はこういう世の中だったのだ。スターと呼ばれた人たちの「真実」を知ることは、人間理解を深くする。人には、光も影もあるのだ。そういう意味では、若い人にも読んでいただきたい。矢崎泰久編『永六輔の伝言~僕が愛した「芸と反骨」』(集英社新書2016.8)740円