「知的財産会計」なんて怖くない! | ぶっちゃけ税理士・岩松正記のブログ

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仙台市の税理士、岩松正記が書く、起業・ビジネスネタを中心に、ときどき読感やセミナー感想など。
山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無一文を経験後に開業。
モットーは「一蓮托生」

これは前日紹介した田中弘「時価会計不況」とは
いわば対極にある本と言えます。

知的財産会計 (文春新書)/二村 隆章
¥714
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著者と職業:二村隆章(監査法人代表社員)・岸宣仁(経済ジャーナリスト)
発行:平成14年(2002)


特許などのライセンス契約について
これが妥当なものなのかどうか、
海外企業は、著者の勤務していた外資系監査法人など
専門家によるロイヤリティー監査をガンガン実施するのに対し
日本企業からは全く依頼が来ない。

これはなぜか?

日本企業の知的財産に対する意識の低さはどこからくるのか?

この、著者の疑問を解消することから、本書は始まります。


本書で取り上げる知的財産とは
会計上は無形固定資産や繰延資産に含まれるもので、
特許、発明やブランド、考案、著作物など
目に見えない財産と言われるものです。


簡単に言うと・・・。

そういうものを築きあげるにはお金がかかる。
その出費が、会計上、正しく計上されているのかどうか。

経費になってしまって会社の財産に残らないものもあれば、
資産として帳簿に載っているものもある。

しかし、その帳簿の金額が正しい金額と言えるのか。


外部から見て、会社の収益に多大に貢献しているであろう知的財産が
会社の財産状態として正しく把握されないのはマズイのではないか。


そこで出てくるのが「時価」での評価

ということです。


本書によれば、
その「時価」とは
市場価格とかいうものではなく
「フェアバリュー(公平最適価格)」というもので
利害の対立する取引当事者双方にとって納得できる金額(p.38)
である、としています。


本書では米国や英国の実例を取り上げながら、

時価会計が投資家のためのものであり、
また知的財産会計を強化することが
知的財産王国である我が国の発展にも寄与する
という主張が貫かれています。


確かに、世界を相手にする場合には
国際基準に合わせなければならない。
そして単に合わせるだけでなく
こちらから積極的に関わっていかなければならない。


我々中小零細企業においては
ロイヤリティーとか特許などというのは
これらは縁遠い話ではありますが、
知識として教養として
知っておいて損はない話です。

もちろん、海外と取り引きする会社や
国際取引に興味のある人には
お勧めの本といえますね。



知的財産会計 (文春新書)/二村 隆章
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【この本から学ぶズルと工夫】

時価会計を厳密に行うためには
連結納税が必要なのだということが
この本で知った学びでした(p.112参照。やや専門的なのでここでは省略)。

連結納税とは
親子会社の税務申告をグループ全体で行うもので
一部の上場企業ではすでに導入されています。

中小零細企業においてはほとんど縁のないものでしたが、
今度、中小零細企業においても
グループ課税が適用されるようになります。

これは簡単に言うと
親子会社や兄弟会社間での取り引きが
税金計算上除外されたりするもので、
連結納税と違うところは
条件を満たした場合に強制適用になるということです。


中小零細企業には時価会計は無縁・・・などと言っていましたが
そうばかりも言えない。。。
ヒタヒタと足音が近づいてきている。。。
というのが、実情なんですね。


ちなみにこの制度は
平成22年10月1日より開始されますので
何社も会社を持っている方は特に
適用条件などを事前に検討しておくことが必要です。

問い合わせは私でなく
顧問税理士さんへお願いしますね(笑)