ポン大のポンスケたち

 

◇ 現状認識に欠けている

 12月6日の夜、日大アメフト部の「廃部」について部員たちに対する説明会が行われた。会場には部員61人が集まり、発言した部員は20名ほどで、保護者などを含む151人がオンラインで参加した、という記事を見つけた。大学側からは、第三者委員会の報告書で不適切な行為をとったとして即時の辞任が勧告され、年内での辞任が決まっている沢田副学長、競技スポーツ運営委員会のスポーツ科学部長、アメフト部監督らが出席した。

 冒頭に沢田副学長から廃部の方針を決めた理由について「大きく挙げると3つ考えられるかと思う。ひとつは違法薬物事案において逮捕者を出したこと。アメリカンフットボール部で発生したということで、大きな社会的影響を生んでしまったということ。それから、これは直接皆さんにというより大学側の問題で日本大学はアメリカンフットボール部をきちんと管理できなかった。マネジメントできなかったということが非常に大きな理由だ。この状況では、アメリカンフットボール部を存続させることはできないだろうと、一度リセットするしかないであろうというような結論になった」という説明があった。

 この後に続いた学生たちの意見をネットの中で拾い集めた。

 学生A:  薬物に関与しているのにまだ残っている人を、このチームから去ってもらうことを第一にしなければ、前に進むことはできないということは自覚しています。もう一度、このチームが再開できるチャンスを考えていただくことはできないでしょうか? お願いします。

 学生B: ルールの厳格化やチームの基盤作りについてしっかり考えてきました。そういう取り組みをしている人間が、この部には多くいるっていうことを分かって欲しいですし、自分たちは必ずこのチームを良くさせる自信がありますし、復活させる自信もあります。

 学生C: 日大フェニックスというのは本来、しっかりとした団体なんだよというのを世間の皆さんに伝えるためにも、みんなで話し合って組織作りをしていければと思っております。ですので、いま一度、部の対応についてはお考えくだされば幸いです。

 学生D: 真面目な学生がそういう処罰を受けるのはちょっと違うかなと思っていて、廃部処分というのを僕ら真面目な学生が受け入れさせられるのは、全く間違いなのではと思います。

 学生E:  僕から言わせていただければ、日本大学フェニックスが報道されていた中で、部員よりも沢田副学長、あなたの行動について報道されたことが多いと思うんです。沢田副学長は責任を感じていると思うんですけど行動になってないです。また、学部長は日本の宝、スポーツ選手の宝を潰そうとしているんですよ。

 この他に「薬物事件に関与したとされる人たちは一緒に大学日本一を目指してやってきた仲間だった。それがすごく悔しい。もう一度、このチームが再開できるチャンスをもらうために、廃部の方針は考え直して欲しい」、「自分のようにアメフト部への入部をきっかけに日大に入って良かったとか、4年間頑張ろうと思った学生もいるので、廃部にして欲しくない」、一方「自分自身、お酒もたばこもやったことがないし、多くの部員は真面目にやってきた。真面目な部員もまとめて責任を取らされるのは違うと思う」とか、「薬物の問題を知らずに入学して、逮捕者が出たことでアメフトが続けられなくなった。何も知らなかった部員にも責任を押しつけるのはおかしい」などという意見も見つけた。

 これらの発言を見て“あぁ”という嘆息しか出なかった。集まったアメフト部員たちは、関西大学との定期戦で監督の指示で行った悪質タックルが問題になり、監督は辞任、理事長は更迭、日大アメフト部は休部に追い込まれたことを知らないのだと思った。事件が起きたのは2018年5月のこと、5年も前のことでこの場にいる学生たちは皆高校生の頃のことだ。そのせいか大学を揺るがすような不祥事を5年前に起こし、今回は法律に違反する犯罪行為を犯してしまったということの反省はまったく見られない。また裁判で違法薬物に関わった部員は10名ほどいるという証言があったが、現在判明しているのは4名、残りの6名の存在については思いを致していない。これはどうしたことだろうか。現状認識がまるで出来ていない。事態を顧みる言葉もなくただ自分たちの欲しいものだけを欲求している。まさにポン大のポンスケたちの寝言のような発言だった。

 

 確かに「廃部」は 罪のない部員にとっては理不尽なことと思うかも知れない。だが、内部統制や自浄作用が働かないチームが「チャンスが欲しい」と言ってもそれはとうてい社会は通用するものではない。違反タックル事件で処分され、部として生まれ変わったはずなのに何も変わっていない。変わる機会があったのに、自ら変わろう、変えようとしなかった日大フェニックス部員たちが「もう一度機会を」と願ってももうそれに貸す耳はない。それはあまりに甘すぎる。君たちの試合はもうとっくに終わってしまっているのだと言ってやりたい持ちになった。益子学部長に対して、「廃部」は「日本の宝、スポーツ選手の宝を潰そうとしている」と批判する発言があったが、日本の宝とは思わないが「諸君の宝」を潰したのは諸君自らの手だ。

 

◇ 発言を支持する

 12月4日に開かれた記者会見で、記者からアメフト部の廃部と連帯責任について問われた林真理子理事長は、連帯責任はできるだけなくしたいと思っている。ただ、これだけ迷惑をかける個人がいたときには別の考えかたをしなきゃいけない。連帯責任は肯定すべきではないが、そうすべき時があるというのが私の考えだと答えた。

 私は一部の不心得の者の不祥事を連帯責任として問うというやり方には批判的だが、今度ばかりは林理事長の判断を支持する。第一に学生寮が舞台になっていて集団的、常習的なこと。第二に学生寮には二人のコーチが常駐していたということだ。管理体制にも不備があったと思わざるを得ない。知らなかった学生もいただろうが、知っていた学生もたくさんいたに違いない。それ故、学生とコーチに対し管理責任に基づく連帯責任が問われて当然であり、「廃部」はアメフト部に対するペナルティだと思う。

 

 麻薬取締法違反の罪に問われた初公判で被告の学生は、抜き打ち検査で部屋から覚せい剤や大麻を保管していた缶が見つかり沢田副学長に回収されたされた際に、監督から「副学長に見つかって良かったな」と言われたという。この発言について「副学長がもみ消してくれると思った」と証言した。何というお気楽な証言だろうか。この証言が波及するものまで考慮していない実に驚くべく証言だ。こわもての剛腕ヤメ検もポン大のポンスケたちにかかったらすっかり舐められてしまい、これでは面目もクソもあったものじゃない。

 12月15日に開かれて臨時の理事会で正式にアメリカンフットボール部の廃部が決まった。