こんにちは、浅田レディースクリニックの薬剤師です!

花粉症持ちの方にとっては憂うつな季節が始まりました。
日本気象協会のデータによると2025年の飛散傾向は前年よりも多くなる地域が多いようです。

 

日本気象協会2025年春の花粉飛散予測(第3報) | JWAニュース | 日本気象協会

さて、不妊治療中に花粉症の薬はどうしたら良いのだろう?と悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそういった疑問にお答えしていきたいと思います。

Q. 不妊治療中、花粉症の薬を使用しても良いでしょうか?
A.いずれの薬も問題ありません。

当院で治療に使っている薬と花粉症の薬の飲み合わせはいずれも問題ありません。
病院でもらう処方薬、ドラッグストア等で購入する市販薬ともに、内服薬や点鼻薬、点眼薬などを問わず
いずれも不妊治療中に使用していただいて構いません。

Q. 市販薬を使う場合のオススメはありますか?
A.安全性評価がされている成分の薬を選ぶと良いでしょう。 

 

現在、安全性評価基準として主流になっているものはオーストラリア分類とBriggs基準です。
〇オーストラリア分類:ヒト妊婦への使用経験をふまえた安全性評価項目 A(安全性が高い)→X(危険)の7段階で評価
〇Briggs基準:適合、リスク、禁忌、ND(ヒト妊婦への投与経験が無い薬における安全度) それぞれについての評価
※リスクが未知である薬を実際の妊婦に投与することは倫理的に不可能であるため、動物実験をもとに薬を使っていない場合と
比較して先天異常などのリスクが上がっていないことを証明することで安全性評価がなされています。

 


以下は、いずれもヒト胎児への有害作用の発生頻度増加が報告されていないもの、動物実験では危険性が確認されていないものです。


市販されている薬の中で、フェキソフェナジンは中規模研究(300人以上が対象の試験)、セチリジンとロラタジンは大規模研究(1000人以上が対象の試験)において妊娠中の使用リスクが否定されています。
迷った時はこれらの成分が入ったものをお勧めします。

他に、普段から車を運転する習慣があるので眠気は出ないほうが良いなど個々のライフスタイルや、症状に合わせた薬を選ぶこともポイントとなります。
これらの情報については、耳鼻科の医師やドラッグストア店頭の薬剤師に相談すると良いでしょう。

Q. 胚移植後は、花粉症の薬を中止した方が良いですか?
A.薬を変更する場合でも妊娠判明後の変更で問題ありません。
妊娠中の服用については主治医の判断となります。


妊娠が判明するまでは、現在使用中の薬を続けていただいて構いません。
妊娠が判明して以降はより安全に使える薬に切り替えとなる場合もあるため、主治医の指示を仰いでください。
市販薬のみを使用中の方は、耳鼻科等の医療機関にて妊娠中であることを伝えた上でより適した薬を処方していただくことをお勧めします。


~コラム~
「赤ちゃんへの薬の影響、実際どういった仕組みで起こるの?」

正常所見4-7週 – 日本産婦人科医会


●妊娠第2週~15週頃
赤ちゃんに栄養を送る胎盤がまだ作られていない時期、赤ちゃんは卵黄のうから栄養を得ています。 
この時期は、薬を使っても影響の出ない無影響期(第2週~3週)と、催奇形性を起こす薬の使用に注意が必要な
絶対過敏期(第4週~7週)、相対過敏期(第8週~15週)に分けられます。 
一般的に月経が来ずに妊娠の可能性を調べる第4週頃から、一部の薬が母体の血液を通して赤ちゃんの器官形成に影響を与えることが知られています。
花粉症の薬には該当がありませんが、他に服用中の薬があれば主治医に妊娠したことを必ず伝えてください。

以下は妊娠初期に服用した場合、赤ちゃんに催奇形性等が報告された薬の一例です。
※薬の継続可否については主治医の判断となり、母体の安全を優先して薬が継続となることもあります

産婦人科診療ガイドライン産科編CQ104-1
 

●妊娠第16週~
胎盤が完成し、お母さんの摂取したものが胎盤を介して赤ちゃんに栄養として届く時期です。
薬には胎盤を通過しやすいものとそうでないものがあり、以下の特徴をもつ薬は胎盤を通過しやすく赤ちゃんにも
届きやすいとされています。
①分子量(≒薬の体積)の小さい薬
②脂溶性が高い薬
③血漿タンパク結合率が低い薬
④濃度勾配(母体血中の薬の量が非常に多い)  など
これらの特徴をもとに、妊娠中の薬の使用可否や適正量が決められています。

また、薬は一般的に、静脈内投与(注射)>経口投与(内服)>局所投与(外用)の順に母体血中に入る量が多くなるため、
赤ちゃんへの影響も同様に静脈内投与が最も起こりやすいとされます。
このことからも局所投与である点眼薬や点鼻薬などの外用薬は比較的安全に使えることが分かります。

「妊娠中は薬を一切使ってはいけないはず」とアレルギー症状を酷い状態で放置していると、その症状自体が子宮収縮などの一因となり赤ちゃんへの悪影響につながる恐れがあります。
薬の適切な使用はお母さんと赤ちゃん双方にメリットがあるので、心配なことがあれば是非一度ご相談ください。