星屑
歌手が精一杯歌を歌う時は、その曲はいつか吉野屋で流れるようになることをまるで考えていないだろう。
蛍光灯の光線が牛丼から溢れ出ている脂に反射して目に映り、空気が淀んでいるあの店で久し振りに聴いたあの曲は、真夜中露に湿った陸上を走りながらよく聴いたものだ。あの在り来たりなアニメの主題曲を、俺は今でも好きでいる。聴く度に走っている時の思い出が甦り、走り出したくなる。
しかしあの時重たいコートと約束に縛られている俺は、好き勝手に暴走することができなかった。年をとるにつれ、身につける物が増えた。財布や眼鏡に、携帯とiPodと左ポケットに突っ込む小説と、身が日毎に重くなってしまう。背負った責任と抑制された欲。それは果たして大人の証拠と呼べるだろうか。