すべ | long island sound

すべ

7時に目覚まし時計の役を果たさせている携帯がケツメイシの「夏の思い出」を再生し、俺は素早くベッドから飛び上がり、それを手に取って睡眠を10分ぐらい延長した。睡眠のその最後の10分が愛しくてたまらない。再びベッドに入ってから寝坊して授業に遅れることはあるが、今日は10分後大人しく起き上がり、朝食を食べに階下へ。そこでオカアサンは待っていて、俺が食卓についたら夕べの夕飯の残り物とご飯を運んでくれる。テレビニュースを必死に聴いているような振りをし、黙々と朝ご飯を食べ終え、「ご馳走様でした」とまた階段を登った。シャワーを浴びてもまだ時間が余っていたので、王子駅の近くの喫茶店で香ばしいコーヒーを飲みながら「東京タワー」の続きを読み始めた。とっても面白い本で、これぞ文学と言わんばかりに俺はそれを愛読している。電車に乗って読み続けると、突然笑い出したりニコニコしたりして、周りの乗客に変態だと思われたに違いない。実際はそうかもしれない。


四谷に着いたらexcelsior caféにはしごし、麹町通りを眺める窓際の席でまた読み始めた。


昼頃は何もかもがうまく行っているような気分だったが、先程図書館に向かっていた途中で嫌な予感がした。努力すれば授業は何とかなりそうだし、このまま映画や本を楽しみながら勉強に取り組んでいけば多分上達はするだろうし、本当はそれでいいはずなのに、横目で不気味な雲が低迷しているところが見える。文学に没頭しながらアルバイトのような鍛錬を重ねている今は絶好調のはずなのに、何故か自信がなくて話せない。言いたいことが言えない場合さえある。こんなに急に駄目になってしまって、いったい何があったのだ?


今朝は青空が晴れていたが、図書館の外で天上を見上げたらくすんだ灰色だけが見え、風が強い。嵐が来るような予感がした。