almost sunday | long island sound

almost sunday

通勤がてらの読書は楽しくて目が覚める。静かに眠っている街の下を通り抜ける浦和美園行きの中で、ページを捲り続ける。最初は半分義務的な気持ちで読んでいた日本の小説は、最近どんどん面白くなり、電車の中であろうが昼休みであろうが読む気が自然と湧いてくる。読んでいるうちに眠くなる頃に引き換え、一晩中ホールを巡回して疲れていても降りる駅に近づくことが惜しくなるほど次の章、次のページ、次の段落を読みたがっている自分に、正直驚くのだ。来週引越しをすると、通勤が長くなるのを楽しみにしているぐらいだ。


最近俺は、自分がなりたい人になりかかっているような気がする。まだまだこれからだけど、少なくとも行きたいところを、遠くからだとしても、確実に見つめていると思う。夢でしか見たことのない光景を水彩画のカンバスに再現しようとしている画家のように。理想があることだけが確かだが、それを貫こうとすると筆を握る手の指の間からなにか大事なものがぽろぽろ零れ落ちてしまう。何度も何度も挫折してはカンバスを棄ててしまい、再び一からやり直す。俺は頭の中で漠然としたイメージを描いて見せようと、今までそのように繰り返して振り出しに戻り続けてきた。恐る恐る白紙に色彩を加え、望み通りに行かなかったら二度と振り返らずにその絵を投げ出し続けた。しかし今は違う。カンバスと向き合い、俺は自分の理想を描いてみせる。多少間違えたりはするかもしれないが、人生には「完成品」もなければ「失敗作」もない。ただ何かを目掛けて描き続けるしかないのだ。