救出 | long island sound

救出

近代文学の講義には早く着いたが、時間になっても教授はなかなか来ない。立って歩いている時は心強い気持ちになるけど、座ると何故か弱気になる。頭を机の上に載せて窓の外を眺める。今日東京は曇りだ。


20分程経つと、カジュアル服の男性(大学院生だろう)が講義室に入って、休講になったと述べた。が、これを機会に皆に調査への参加を頼んだ。協力するかどうかは自由だが、僕は勿論参加することにした。


調査のトピックは「援助行動と後ろめたさ」。後ろめたさという単語が知らなかったので、辞書を引いてみる。


うしろめたい【後ろめたい】

① あとの事が気にかかる。こころもとない。

② やましいところがあるので気がひける。「前にも迷惑をかけているので頼むのが-・い」


殆どの問いは、誰かに頼まれたが断る時の気持ちについてだった。例えば約束へ急いでいる最中に友人になくした財布を一緒に探して欲しいと頼まれたとか、よく授業をサボる知り合いに「ノートを貸して」と頼まれたとかといった時に、断ってからどんな気持ちになるかという問いは多かった。そして、もしあなたが実際に頼まれたらどうするかという質問もあった。僕は、嫌いな人に頼まれる場合でも、大きな負担になる場合でも、「絶対に手伝ってあげる」という選択肢に丸を付けた。


それは、僕は優しいからとか、良い人だからとか、全くそういう訳ではない。子供の頃から、僕は自分のことを最低の人間だと思い込んでいる。そしてそれを口実にした。どうせ最低だから、無責任で人を傷つけることも、嫌なことがある度に逃げることも当然だろう、と。


では何故頼まれたら絶対に手伝ってあげるのか。それは、自分を助けるよりも、他人を助ける方がずっと簡単だから。