尊皇攘夷 | long island sound

尊皇攘夷

日本語の専攻という暗闇の渦には、純情な善人が吸い込まれる。人間性を広げる為か、日本文化について習う為か、日本人の友達を作る為か、島国根性の日本人にはその理由は無意義だ。

マイケル、タイラー、コリー、ケビン、サッチャーの皆はいい人なんだ。僕、ニューヨークでは冷たくて、三年生になってから高校の後輩をいじめた事は多い。チームに入ったばかりの新米は情熱のない昔の僕を思い出させた。そういう所が嫌いだった。四年生の頃、日本語の勉強の為に部活を辞めて、授業もよくサボった。チームメートに嫌われても、自分の未来の方が大切で、構わないと思った。しかし、周りの人に憎まれて、孤独を痛い程感じさせられてしまった。入学した時は、友人という勉強の邪魔なんか要らないと思いきや、サッチャーに入ってから何かが変わった。友達を一杯作るとつれて、交際嫌い性格もどんどん治ってきた。

先日、日本人の知り合いのサプライズパーティーを行った。話したことは全然ないにもかかわらず、日本人でもアメリカ人でも本人の友達を招いた。パーティーの日は、クラスが終わった途端教室から飛び出して、酒や予約したケーキを買って、何時間準備で忙しかった。あの知り合いはドアを開けてから物凄く驚いて、成功だと思った。買った酒を何本配って、皆と一緒に乾杯した。ピザやケーキを食べている間に、日本人はドアの辺りに群れを成して、友人間日本語で話していた。僕を知らないうちに買った酒を呑みながら、あの部屋で自分の島国を作り出した。なるほど当然だと思った。プレゼントが開いてから、日本人の一人が最後の「誕生日おめでとう」を言って、出かけようとした。それを見て、日本人の皆が早く「おめでとう」を噴き出して、一斉ドアを潜り抜こうとした。無論あの狭いドアを一斉通す訳はなかったが、外人の部屋に残るのを嫌がっていた所為か、先の人を押したりして何となく潜り切れた。僕は呆然とあの群れの苦々しい動きを見て、心に潜んだ孤独を改めて感じた。群れは廊下に零れて、間髪を入れずに日本人の部屋で酒を呑みに行った。外人の部屋はそんなに苦しかったら、来る必要はなかったと思いきや、一匹はドアの間に戻ってきた。先学期橋本先生が行ってくださったカンバセーションテーブルで出会った事はあったから、名前も覚えていた。呑んでいる間に僕に一言も言ってくれなかったから、僕は挨拶をした。彼、僕の顔を正直見てから、何も言わずに誕生日の日本人に向いて話しかけた。

あの部屋に残っていたサッチャーのアメリカ人達は、深く考えなくて、楽しんでいた。僕は、気持を隠してマイケルと話してた。

パーティー三日後、日本人達はもう一度鍵を掛けたドアの後ろに呑んでいた。友人まで呼べるかどうか分からないけど、他の日本人の知り合いが僕の部屋に寄って、パーティーから残ったワインが欲しいと言ってた。僕が呑むつもりはなかったし、日本人の部屋まで届けてあげた。僕を黙殺した奴は、あの部屋にいて、ワインを持って来た僕の姿を見て、ニコニコと話してくれた。ワインをテーブルに置いて、早く出かけた。ドアを閉めたそばから、アイツが「何故『祝われた日本人』はあいつが好きか今更分かってきた」って言って、群れが笑い出した。

今、何故日本語を勉強しているか、再び考えている。言語を勉強する事は辛い事に違いない。タイラーと話して、彼はこう言った。「言語を勉強すると共には尊厳を失う。」今は英語を教えたいと言ってたが、元々コンピューター科学専門のタイラーは立派な人なんだ。何故島国のあいつらの為に自分の尊厳を見捨てるか、僕には全然分からない。マイケルみたいな親切な人の挨拶を返事さえもしないあいつらの為に教える事には意味ないだろう?

日本に行ってからどうなるか分からないが、サッチャーの友達の事を心配してるんだ。確かに皆は、通り一遍のアメリカ人と違うかも知れない。けどその所為で日本人に排斥されるのは、僕の心には違和の響きを鳴らす。マイケル達は話しやすくて、優しくて、いい人なんだ。マイケルは、たとえ呂律が全然回らなくても、たとえ言葉が通じなくても、できるだけ日本語で話し抜くんだ。もし彼の優しい心が日本人に踏み倒されたら、僕はあの島国が絶対に許せない。

今僕は、何故日本語を勉強し始めたかすっかり分からなくなってしまった。他のことを勉強すればよかったのに、今更止めるつもりはない。固執の他に理由もなくても、覚悟はできたから、続くしかない。先学期も言ってた筈だな。「僕の夢や希望は全て、日本にあるんだから。」