ウォーターサーバーのお水は、いつも彼が届けてくれます。20日おきに40L。
うちは、アパートの2階で、エレベーターがないので、彼は担いで運ばないといけなくて、私はいつも、申し訳なく思っていました。
それがこの度、送料の改定とやらで、運送会社が変わりました。
お兄さん、お水、今度からヤマトさんが届けてくださることになったんです。
長い間、ありがとうございました、と私は、彼にお礼を言いました。
大変だったでしょう、と私が労うと、彼は、
僕がなよいからですか?大丈夫ですよ。でも、寂しいです。
彼は、寂しいと言いました。
それは、社交辞令なの?もしくは、仕事が一件減ってしまうから?
それとも、あんなに重い荷物なのに、私に会えるから、苦じゃなかったというの?
私も、と言いたかったのに、私は動揺して、タイミングを失ってしまいました。
若いからなのか、彼の性格なのか、彼は言葉も表情も、本当に素直です。そして私は、彼のそういうところに惹かれていたのに。
彼は、私の言葉を待っていたようですが、私が何も言えずにいると、
でも、ほかの荷物は引き続き届けますので。
と、挨拶して去って行きました。
私は、伝えないといけないことを、伝え損ねてしまいました。私は、次に彼に会ったとき、彼がたとえ忘れていたとしても、伝えないといけないと思いました。それは、自分のために。後悔しないために。
私も、寂しい。
お兄さんに会えなくなったら、寂しい。