クルーズだとありきたりかなと思って。

と、横浜駅で待ち合わせて、そこからフェリーで中華街まで向かいました。

彼、あの当時で、二人で3万円以上する中華を、ご馳走してくれたんですよね。

彼は、私のことをあれこれ分析してたみたいで、会話はどこか、答え合わせをしてるみたいでした。私は彼に対して、落として持ち上げるような話し方をするらしく、それはわざとなのかとか、聞かれました。

彼はそのとき、ゲーム制作会社に就職したばかりだったのですが、思い返すと、それまでの彼とのやりとりもゲームみたいでした。だから面白がって、私を選んだんでしょうけど、私は本当は、全然うぶでした。そして私のほうも、彼のスペックがいいから、彼の誘いに乗ったにすぎませんでした。

でも、断片的とはいえ、こんなに十数年経っても、まだ会話の内容を覚えているんだから、彼は本当に興味深い、魅力的な人だったんだと思います。

彼は、魅力的な年齢は、人それぞれで、私はまだその年齢じゃない、という話をしました。私はふん、と思って、

私はいつでも完璧よ、と答えると、彼は、

すごい自信だな、と笑って、

まあ、今も可愛いけど、とささやきました。

あと、彼はお父さんが亡くなっていて、子供の頃は、いつお葬式をあげてもいいように、お家の畳をピカピカにしていたそうです。

どうして?

そうすれば、何の心配もせずに、看病に専念できるから。

あの短い時間のなかで、私はもっと自分を出すべきでした。もっとはっきり、あなたのことが好きになりそうだから、また次も、あなたと会いたい。あなたのことが知りたい。そう、素直に言えば良かったんです。

でも私は、背伸びして、強がることしかできませんでした。彼があまりにもまぶしくて、私はあまりにも経験がなさすぎて、どう対応したらいいか、わからなかったんです。

だから私は、絶対に逃したらいけないチャンスを、逃してしまいました。