自分の仕事は終わったのに、ベビーカーも運ぶだなんて。

私はとっさの申し出におどろいて、

大丈夫ですよ!

と、断ってしまいました。

彼は、少し残念そうな、曖昧な微笑を浮かべて去って行きました。

断ってしまったものの、そのとき私の心には、彼の記憶がしっかりと刻み込まれました。

その後も彼は、重い荷物のときは、

気をつけてくださいね、とか、

他社の置き配がそのままになっていたときには、一緒にお入れしますね、

と玄関先に入れるのを手伝ってくれたり、親切にしてくれました。

そのことを職場の先輩に話したら、

会社宛に、お褒めの言葉を送ってあげなよ!

と、言われました。運送業界なんて、クレームだらけだろうから、お褒めの言葉を送って貢献すべきだと言われました。

私は少し面倒な気持ちがして、数ヶ月先送りにしました。それでも彼は、日に日に成長して、丁寧な仕事ぶりは、お礼を言うに値するものになっていました。私は見て見ぬふりもできなくなり、ついに手紙を送ることにしました。