頭で理解しようとしても、本能が、理解してくれません。
彼は、以前に同棲していた穀潰しと、どこか色気が似ている。もちろん彼は、あんなクズとは違うと思うけれど。
その男は、視線がするどく、体はしなやかで、なめした革のような肌は、私を魅了しました。
すぐに朽ちてしまう、若いはかなさも、私達には、永遠に思えました。ずっと若くて、愛し合っていられるように思えました。
彼も、すぐに歳をとるでしょう。歳をとった彼を愛せるのか?
まったく自信がありません。若さは消費するものですから。
私は、あの男に惚れていましたが、同じく朽ち行く自分の価値を忖度し、彼を選ぶことはしませんでした。かなりの金額を、溶かしてしまったので、そろそろ限界だったというのもありました。
そして私は、もっとお金になる男を、夫に選びました。彼を選んだのは、間違いなく正解だったし、適切な判断でした。
でも、
もしそうやって、正解だけを、間違いないものだけを集めたなら、それは少し寂しい。
不毛な愛も、実らない恋も、大切な私の感情。
だから、たとえ人に言うのが憚られたとしても、せめて心の中だけでは、この気持ちを育てていきたいと思いました。