【殿下、ついに認める!!】
【破局報道は事実!!】
【3年目の破局!!】

明日発売の週刊誌の文字が、様々な憶測を呼びながら朝からTV番組の話題をさらっていた

TVのリポーターは宮の前から生中継している


[つい先程、宮から正式に発表されました。週刊誌にスクープされた記事は事実だと言うことです。しかしながら、いつ頃、どうして別れたのか…などはお相手の方もこれからの公演に差し障ると言うこととでプライベートな部分は差し控えるとの事です。度々仲睦まじい姿を見せていたお二人は、婚姻間近かと思われていたのに国民は今回の発表に驚いています]

ザワザワザワ…

町中、このニュースを見る歩きスマホだらけ…


しかし、そんな国内の様子を気にかける事もなく、いつもと変わらない執務をこなしている、この話題の殿下ことイ・シン


『コン内官、この書類ですが…』

『はい、何か不備でも…』

『これは以前、僕が指摘した部分。まだ修正されていません』

『申し訳ございません殿下…』

『それから、あの件のその後を報告して下さい』

『その後でございますか?』

『そうです…』

『それはまだ…』

『…ふぅ……やっとこの日が迎えられたのに、皇太后さまは何をお考えなんだ』

『………』

『皇太后さまに僕が返事を待っていると伝えて下さい』

『かしこまりました。しかしながら、殿下…』

『何か?』

『それが…午前中に宮から正式に発表を済ませた途端、王族達が陛下に詰め寄っております』

『でしょうね。あれは大人たちが考えたことです。陛下に責任持って解決して頂きます。一応、僕も被害者ですから…』


シンはそう言うと窓の外に目を向けた

7月の澄みきった青空だった



……被害者……か……

ふっ……

…一番の被害者は君なのに……

宮の横暴に振り回されたんだから……

だから今回は僕が宮を振り回す立場になるんだ

僕の話に耳を傾ける事をせず、一方的に騒動の鎮静化の為に君を隠した

それにより僕は息を吸う、息を吐く…こんな自然な事も辛くなったんだ
もう生きていられない程に…

この辛さに比べれば大人たちは、このリークを咎めることはできないはずだ

そう…
《皇太子殿下は破局した》
僕がタレコミしたんだから…



【3年前】


陛下の体調が思わしくなくその代理としてシンは初めての海外公務のタイを訪れていた

祖国には秘密の彼女を残して…




公務最終日

シンの携帯が揺れた


!!…



『ヨボセヨ…』

『シン、来ちゃった…驚いた?』

『………』

『少し時間ある?』

『………』

『シンに逢いたくてここまで来たのに…ダメとか言わないでね…』

『……待ってろ…』

pi……



なぜ、電話があったのか?…

そんな事を考えることもなかった

ただなんとなく……

いや…

なんとなくではなく

[こんなことはしないでくれないか?]

釘を指すつもりだった

君の為に…



しかし結果は…

公務を終えた僕は君に会えなくなってしまった…

[もう会えない…]




【破局報道の半年前】

カシャカシャカシャ…

『殿下~、本日の凱旋公演はいかがでしたか?』
『殿下、この後はお二人でデートですか?』
『殿下~、彼女の留学先でのコメント(やはり寂しい時はありますね)が話題になっていますがご心配ではありませんか?』
『彼女の為にも殿下も、これから留学されるのですか?』



執拗に浴びせられる質問の数々…

何も知らないから仕方がないと諦める…

だからいつもの氷の皇子対応…

何も変わらない

何も変わってない

今まで通り…

ありまま…なのは世間だけ…

僕の世界は氷に覆われている

氷の中では呼吸出来ない…

だから君に…

会いたい…
会いたい…
会いたい…