《ほーーっ、殿下がこのようなことをなさるとは……》

この光景を隠れて見ていたシンに使えて13年のコン内官が驚くのも無理はない。

宮でも学校でも公務でも、微笑みは氷のようにクールであとは滅多に表情を変えないポーカーフェイスのシン

そのシンが、”あーん”して食べさせて貰うなど恐らく今までに一度でも宮に支えたことがあるものであれば俄かには信じられない光景だろう

《シン・チェギョン嬢と申したな。シン…………早速、詳しくお調べしよう。》

コン内官は手帳に何やら書き留めて指示を出した


そしてシンのもとにはタブレットを運んだ

『殿下、先ほど発表され、もう既に回線がパンクしそうでございます。』

『そうか……』

料理長のスイーツを堪能中のチェギョン……

フォークを口にくわえたままそのやり取りを聞いていた

『おい、これ見ろ』

シンが今手渡されたタブレットをチェギョンに見せる

目を通すチェギョン……

思わずくわえていたフォークが口から落ちた……

『これって……この写真って……』

大きな瞳がさらに大きさを増す

『この写真は私……』

『大丈夫だ。顔は写っていない。』

『でも……』

『しかもこの独特な団子頭ではない。』

『…………』

『ここからチェギョンだとわかることはない』

『だと……いいんですが……』

スイーツの味を忘れてしまう驚き


《やっぱり私は…………》
 
 
チェギョンはすっと立ち上がり

『帰ります……』

『あっ……あぁ……送らせる。目立たないように一般の車で……』

『はい……』

少し元気のない足取りでドアに向かい歩き始めたチェギョン

『……待て……』

『明日、学校で友人に問われたら、僕に失礼なことをした罰で暫くの間、学校でいる間の特別女官になったと言え。今日はその為に女官の心得やマナーを教えられたと言うことにする。』

『はぁ?』

『だから、僕が呼び出したらすぐに来い。いいな。』

とシンはチェギョンの前に手を出した。

『何?』

『スマホだ。』

『なぜ……?』

『はっ?今話しただろ。僕が呼び出したらすぐに来るには連絡手段が必要だろ。』

『もう、恋人に……女官に……私は貴方が好きに出来る人間ではないわ。』

『では、捕まえようか?』

『脅し……?』

『では、陛下や皇后にもそう言えるのか?』

『うっ…………もう…………はい…………』

チェギョンはスマホを出した

『僕のアドレスは守秘義務があるから気を付けるように』

と、またあの柔らかいハニカム表情で私にスマホを返してくれた
《あなたはジキルとハイド?》



******



次の日、登校するといきなりヒスンとスニョンに腕を引っ張られた


『チェギョン……こっちでござる。』

『えっ?』

『ヤバイでござるよ。昨日、殿下と一緒に帰ったからあの方がお怒りでござる。』
『誰の事?』

『あの方はあの方よ……』

『あの方?』

『ちょっと、チェギョンは知らないわよ。殿下に今まで興味なかったんだから。』

『あら~~、私を紹介して下さっていたの』

突然現れた一人の女子生徒

『『ウワッ……出た……』』

『出たって二人とも~幽霊?』

『あなたがシン・チェギョン?私のことは知っているわよね』

『えっ?』
《誰?》

ヒスンとスニョンに目で合図を送るが首を小さく振る二人

『あなた、誰?』