今年初めて岩波ホールで鑑賞!
にしても、神保町は雰囲気がいいところですね~
官僚主義を痛烈に笑い飛ばした風刺コメディ「青い山 本当らしくない本当の話」などで知られるジョージア映画界の最長老監督エルダル・シェンゲラヤのヒューマンコメディ。
政府の要職に就くギオルギは、故郷に残した母親のことなどすっかり忘れ、大臣の椅子の座り居心地を満喫していた。
要職の大臣名は「国内避難民追い出し大臣」。
早くに妻を亡くし、娘との折り合いはあまりよくないものの、新しい恋も手に入れ、順風満帆な日々を送っていた。
しかし、ある日突然、大臣をクビになってしまう。
ジョージア国会副議長を務めるなど、政界で活躍した監督自身の経験をベースにした権力社会への風刺を、大らかなユーモアで包みこみ、
ジョージアの魂とも言える葡萄畑が広がる故郷への愛がつづられる。
日本でも「大臣の椅子」「社長の椅子」などと言うが、椅子を重職や権力の象徴とするのは世界共通なのだろうか。
英語でも議長や会長をchairmanと呼ぶ。
しかし、椅子を単なるメタファーにとどめるのではなく、擬人化して狂言回しに使うという発想に意表を突かれたし、それが80過ぎの高齢監督エルダル・シェンゲラヤの作品というからまたびっくり。
おまけに、アナ役のナタリア・ジュゲリ(監督の孫娘)をはじめ、女優陣が美人揃いなのもポイント。
映画の後半では、ギオルギが「大臣の椅子」に乗ってパトカーから逃走するシーンがあり、行き着く場所は、故郷の村の友人宅。しかもワイン甕のワインの中に漬けこまれてしまう。
ワインといえば、ワイナリーの横たわる大きな樽を想像しますが、ジョージアのワインは地下に大きなワイン甕を置いている。
実は日本の和食がユネスコの無形文化遺産に登録された2013年と同じ年に、ジョージア独特のワイン醸造法とその文化も登録され、その醸造法とは、マラ二という醸造蔵の地中に素焼きの甕を埋めて、そこに葡萄の果実や果皮だけでなく種も入れて自然発酵させる方法。
世界に認められ、古代から継承する製法と農薬に依存しない自然派ワインは、まさに地位や名誉に、そして世界の動向に流されず、自然を敬い真摯に生きることの大切さを醸し出す本作そのものですね。