その人は突然現れた。
身なりはお世辞でも裕福そうには見えないが
目深に被ったキャップで隠れた顔を覗き込んでみると
ドキッとするほど端正な顔立ちで、その身なりとは相反して
圧倒な気高さを放っていた。
あまりの衝撃で声を失い只立ち竦むだけの僕に、
その人は話し掛けてきた。
「貴方は、この私を見てどう思いますか?」
「えっ・・・?」
ただでさえ圧倒され過ぎている僕は一瞬、頭の中が真っ白に
なったが、僕の中で何かしら使命感のような思考が始動しだした。
(この人には真の気持ちを答えなければ!)
僕は勇気を振り絞ってありのまま答えた。
身なりとあまりにもギャップがある気高さを感じて圧倒されてしまった
ということを。
僕の返答を聞いたその人は無表情のまま再度話し掛けてきた。
「今も圧倒されていますか?」
今回は間髪入れずに正直な気持ちを答えた。
「いえ、会話を交わした所為か今は平静に戻りました」
その返答を聞いたその人は心から嬉しそうに微笑んで
僕の前にひざまづき
「今までの無礼をお許しください。貴方こそ私がずっと探し求めて
いた方です。どうかこの私と結婚していただけませんか?」
と言ってキャップを取ったその人は今までテレビでしか見たことがなかった
自国のプリンセスだった。
今僕がこの国を治める王にあるのは
20年前突然現れたその人との会話が
すべての始まりである。
一斗