『青い鳥』 | さすらい人の徒然日記

さすらい人の徒然日記

マイペースに更新中

メーテルリンクの『青い鳥』(堀口大學・訳、新潮文庫)を読了。

作者であるメーテルリンクは、詩人、劇作家であり、
ノーベル文学賞を受賞した経歴の持ち主。
その代表作のひとつ、『ペレアスとメリザンド』は、
フォーレ、ドビュッシー、シェーンベルク、シベリウスらによって
音楽化されています。

メーテルリンクの名を知らなくとも、
『青い鳥』の名を知っている人は、かなりの数いることでしょう。
でも、実際に『青い鳥』を読んだことがある人は、
そんなに多くないのでは…?
僕自身、この本を読むまで、
『青い鳥』のことを童話作品だと思っておりましたが、
実際に読むと、セリフとト書きから成り立つ戯曲形式の作品でした。

チルチルとミチルという兄妹が
幸福の青い鳥を探し求めて様々な世界を旅するけれども、
青い鳥は、実は彼らの家にいて、
「幸福は身近な所にあるのだ」と優しく教え説く童話的作品、
というのが、この『青い鳥』の一般的イメージでしょう。
たしかに、そういう面もありますが、
重要なのは、有名な結末だけではありません。

チルチルとミチルは、「光」や犬や猫、パン、砂糖らと共に、
「思い出の国」、「夜の御殿」、「森」、「墓地」、
「幸福の花園」、「未来の王国」などを巡ります。
そこで体験する様々な出来事は、
極めて寓意的な内容に富んでいます。
例えば、夜の御殿にある様々な扉には、
「病気」や「戦争」や「陰」や「恐れ」などが閉じ込められており、
チルチルが扉を開けると、御殿の主である「夜」が、
それらのものについて説明するという具合。

戦争について語る「夜」のセリフを引用してみましょう。

「気をおつけ。そこには「戦争」がはいってるんだよ。昔からみるとずっと恐ろしく、力も強くなってるから。その中の一つでも逃げ出したが最後、どんなことになるかわかりゃしない。ただありがたいことに、あいつらはみんなふとっていて、のろまなんだよ」

この作品は、人間の住む世界を
象徴化させて描いた幻想劇だといえるでしょう。
サン=テグジュペリの『星の王子さま』が、
「童話の姿をした現代文明批判の書」という面も持つように
『青い鳥』も、単純な童話作品というわけではありません。