「ドイツ冬物語」 | さすらい人の徒然日記

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シュティフターの『晩夏』上巻がまだ読み終わってないけど、
平凡社の『世界名詩集大成6 ドイツ1』所収の
ハイネの『ドイツ冬物語』をちょこっと読んでみました。
長編叙事詩なので、まだ、ほんの序盤だけですけどね。

訳者の井上正蔵氏は、この作品について、
「ハイネ自身は、この長詩をフラグメントとみなして書きなおすことを願ったけれども、それはついになされなかった。にもかかわらず、ドイツの現実や歴史のみじめさをあばき出し、徹底的に諷刺し、封建的絶対主義、国粋的排外主義に挑戦する。ことばの本質的な意味での進歩的な傑作である」
と書き記しております。

『ドイツ冬物語』の、ハイネ自身による「序のことば」は、
そうした解説文を裏付ける見事な文章です。
引用したいけれども、かなり長いので、ここに書くには無理がある。
この名文は、全文を読むべきもので、
一部分だけを引用しても無意味だと思いますしね。

ハイネは、ドイツに対して
痛烈な諷刺の言葉を投げつけたけど、
それは故国への憎しみゆえではなく、
愛ゆえの行為であったことがよく分かる。
国家に対して批判的な意見を述べると、
すぐに「反国家的」とのレッテルが貼り付けられる傾向は
いつの時代にもあるものです。
ハイネは、強烈な風刺を利かせた文章を書いていたため、
その作品がドイツ国内において発禁処分を受けました。
そして、ナチス時代においては、
彼がユダヤ人であったため、その本は焚書にあいました。
どんな国家や民族にも、
恥部や暗部とも言うべき歴史的汚点はあるわけで、
それを無かったことにするなんて誰にもできやしない。
そうした醜悪な部分を直視し、
如何にすれば改善できるか、
どうすれば同じ過ちを繰り返さずに済むか、努力すること、
それこそが肝要なのだと思う。

自国を盲目的に絶対視・崇拝するのではなく、
異なる国や民族との交流を積極的に図り、
その文化に対して敬意を表する、自由な精神を持った人、
それが詩人ハイネなのかもしれません。



ドイツ文学者の山下肇氏が10月6日に逝去されたことを
今日、新聞で知りました。
氏の訳書ではエッカーマンの『ゲーテとの対話』(岩波文庫)を
読んだことがあります。
カフカの『変身・断食芸人』(岩波文庫)は未読。
心より哀悼の意を表します。