ケラーの『七つの伝説』(堀内明・訳、岩波文庫)を読了。
「七つの伝説」は、18世紀ドイツの宗教詩人である
コーゼガルテンの宗教伝説を基にして改作した短編小説集。
「オイゲニヤ」、「聖母と悪魔」、「騎士に扮した聖母」、
「破戒の聖僧ヴィタリス」、「ドロテヤの花籠」、
「舞踏の伝説」の計7篇を収録。
このうち「破戒の聖僧ヴィタリス」は、
學生社の『ドイツ短篇名作集』で読みましたが、他は初読み。
「オイゲニヤ」は、男装して僧侶になった少女の物語。
「聖母と悪魔」と「騎士に扮した聖母」は、
聖母マリアに守護された女性を主人公にした連作もの。
「破戒の聖僧ヴィタリス」は、遊女を改悛させるために奔走する
若き僧侶と、彼に恋した少女の物語。
「ドロテヤの花籠」は、愛に殉じて処刑された男女の話。
「舞踏の伝説」は、天国で永遠に踊り続けるため、
現世において踊ることを封印した少女の話。
こうして作品を並べて読んでみると、
ハッピーエンドあり、悲劇あり、軽妙なものあり、といった具合に、
その内容が極めてバラエティに富んでいることが分かります。
この本に併収されているのは「仔猫シュピーゲル」で、
先日図書館で借りて読んだ『月下の幻視者』に収録されていた
「仔ネコのシュピーゲル」と同一作品。
ケラーの短編小説集『ゼルトヴィラの人々』の中の一篇です。
作者の軽妙なユーモア精神に富んだ作品で、
読んでいて、おもわず微笑まずにはいられません。
猫好きにとっては必読ものの一篇。
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』は、
結婚をするという友のために1ポンドの肉を担保にして
金貸しから多額の借金をした男が苦難を切り抜ける物語でしたが、
「仔猫シュピーゲル」は、
飢え死の危機に瀕した仔猫が
食事をさせる代わりに脂肪の譲渡を求める魔術師と契約を結び、
自らの智恵でその苦難を切り抜けるお話です。
物語全体における、おおまかな図式は、だいたい同じですね。
親同士の対立によって、この世で結ばれることが許されず、
純粋な愛を貫くために死を選んだ
「ロメオとジュリエット」と同じ図式を持つ
「村のロメオとユリア」と共に読んでみると、
ケラーが「短篇のシェイクスピア」と呼ばれるわけが分かります。