E・T・A・ホフマンの『スキュデリー嬢』
(吉田六郎・訳、岩波文庫)を読了。
文庫本に付いている帯の部分には、
「ルイ14世治下のパリにつぎつぎに起こる宝石強奪殺人事件。
鴎外訳による題名『玉を懐いて罪あり』で
早くからわが国に知られる作品」
との一文が記されています。
まずは、この物語のあらすじを簡単に説明しておきましょう。
連続宝石強奪殺人事件が連続して発生し、騒然としていたパリ。
それと時を同じくして、スキュデリー嬢の邸にひとりの男が押し入り、
侍女マルティニエールに「スキュデリー女史に渡してくれ」と言い、
小箱を押しつけて立ち去っていく。
その小箱の中から姿を現したのは、
精巧な細工が施された金の腕輪と首飾りであった。
その見事な装飾品が、
当代随一と評判の金細工師カルディラックの作によるものと知った
スキュデリーは…、
そこから宝石強奪殺人事件とどう話が結びついていくのか、
ネタバレ防止のため書き記すことは出来ませんが、
文学史の上では、この『スキュデリー嬢』は、
エドガー・アラン・ポーの作品よりもずっと以前に作られた
ミステリー小説という位置づけになるようです。
もっとも、スキュデリーは、
ホームズやポワロのような名推理を駆使しません。
「高徳の人」であるというスキュデリーの人柄ゆえに
事件関係者の方から真相を明かされるという展開です。
そのため、本格的な推理小説好きにとっては、
少々物足りない内容かも。
主人公であるスキュデリー嬢は、
妙齢の女性ではなく73歳の老嬢。
要するにクリスティの「ミス・マープル」と同じ感じですね。
実在の人物で、
マドレーヌ・ドゥ・スキュデリー(1607-1701)といい、
文筆活動をしていた女性らしいです。
主人公がうら若き乙女だったら、
この作品の人気は、もっと高くなっていただろうに…(笑)
パウル・ヒンデミットがこの小説を
『カルディヤック』(「カルディラック」に非ず)という名で
オペラ化してます。
残念ながら僕は未聴なのですが、
昨年、この作品を収めたDVDが
サヴァリッシュ&バイエルン国立歌劇場と
ケント・ナガノ&パリ・オペラ座の、
2タイトルも発売されたので、けっこう気になっています。
いつか映像を目にする機会は訪れるだろうか?