ところで、当時生計を立てていた、脱法ハーブ販売。
警察の規制とイタチごっこをしていた。
数か月に一度、規制品目が更新され、これまで販売していたものが禁止薬物に指定される。
規制されると、化学式の端っこの方をちょっと変えて、別の物質にして販売される。
その繰り返し。
第2世代とか第3世代程度なら、元々の薬物がどんなものだかわかるし、元々の薬物からそれほどかけ離れていない。
だけど、第5世代とか第6世代となってくると、だんだん、元の薬物からはかけ離れたものになっていく。
それは、どんな効き目やら、元が何だったのかも、よくわからなくなってくる。
売り文句がわからないのだ。
では、自分で使ってみよう。
試飲して、その効果の程を確認してから、売り文句を考える。
当時、売っていた、ほとんどの商品に手を出していた。
煙草にまぶして、火をつけて一息。
その瞬間に、全身が硬直して、後頭部からアスファルトにズゴーンと倒れたこともあった。
助けてくれて救急車を呼んでくれた人が「ズゴーン」と音がした、と言っていたのだ。
「ほんの微量で十分です。使いすぎに注意。」
その商品の当時の売り文句には、僕はこのように書いていた。
綺麗なピンク色の液体状のリキッド。
見た目はかわいいが、効き目はえげつない。
数時間の記憶がなくなり、昼だか夜だかもわからない生活。
意識を失ったまま、失禁していた。
最初は味見のつもりだった。
どんな、売り文句を書けば売れるのだろう?と考えながら、使ってみた。
それが、日常になっていく。
手を伸ばせば、そこには売るほど、脱法ハーブの山があった。
売っていたのだから。
仕入れ先も、怪しむ。
「いってつさん、最近ちょっとおかしくないですか?大丈夫ですか?ろれつが回っていないですよ?」
「まさか、商品に手を出してないですよね?」
「大丈夫、大丈夫」と言いながら、まったくもって大丈夫ではない。
家族が家にいるわずかな時間だけ、正気を保ち、それ以外の時間は白目向いて泡を吹いているような状態。
本人は正気でいるつもりだが、家族だってバカじゃない。
何かが起きている、と気づいている。