素敵絵師様のリコちゃんとのコラボ第二弾でございます━━━━(゚∀゚)━━━━!!

前回の虎松くんのときに書き添えるのを忘れてしまったのだけど(リコちゃんごめん!)、そもそもこのコラボは、私がリコちゃんに、
「恋乱殿、誰でもいいので、見返り姿というか振り返った姿をリクエストしてもいいかなあ(人´∀`*)」
と、お願いしたものです😌

誰を描いてもらえるかドキドキしてたら、虎松くんと才蔵さんを頂きまして♪
お二方書かせてもらった次第です。

こちらも現代版のお話になります。
才蔵さんってだけでプレッシャー半端ないですが😂
素敵な絵に助けてもらいました😊
リコちゃん、ありがとう😆✨


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【記憶のカケラをあつめて】


街の喧騒から少し離れたところに、その人は暮らしていた。
「人目につかない所が性に合うからね」
そんなことを言う彼が何をしているのかと言うと、ここで静かに物を書いている。
それは小説だったり、随筆だったり様々なんだけど。
彼が書くものは読み手の心を掴むものが多く、ベストセラーなんかにもなる。けれど、当の本人は全くと言っていいほどそこに興味が無い。
メディアにも一切出ないから、ミステリアスな作家と世間では評判だ。

限られた人しか、ここには来ない。
私もその一人であることに相変わらずくすぐったい気持ちになりながら、今日もそのインターホンを押す。

ややあって鍵の開く音がすると、
「入りなよ」
中に招かれると、玄関に彼のものではない大きなスニーカーがある。
『あ、いらしてるんですね』
「呼んだ覚えはないけどね」
溜息をつきながら客間に向かうと、
「おお、〇〇も来たのか!」
大きな声が部屋に響き、人懐こい笑顔が向けられた。
『こんにちは、幸村様』
すっかりくつろいでいる姿のある空間に安心する。
この方も、“ 限られた人”の一人なのだ。

「ううむ…〇〇が来たのだったら、トレーニングに付き合ってもらうのは無理か…」
「だからさっきから言ってるでしょ」
ちっとも話を聞かない、と再び溜息をこぼす彼に、
『行ってきていいんですよ?私はいつでも…』
「いいや、今日はお前さんとの約束が先だから」

約束、という言葉に心が温かくなる。
いつどうなるかわからなかったあの時代、約束というものを交わせたのは随分と後になってからだった。
だからこうして当たり前に約束を交わせる今が、贅沢なくらい幸せだ。

『…ありがとうございます、才蔵さん』
私の言葉に、ふっと表情が緩む彼に嬉しくなる。

「そ、それじゃあ俺は帰るぞ、才蔵!」
なぜか顔を赤くした幸村様が、そそくさと玄関に向かう。
次は付き合えよ!と言い残して、戸の向こうに消えていった。

『相変わらずですね』
くすくすと笑う私を残して、才蔵さんは別室に入っていく。
呼び止めると、
「行くんでしょ?」
扉が閉められたかと思うと、かすかに衣擦れの音がする。

(もしかして…)

私の予想は当たり、和服姿の才蔵さんが姿を現した。
「お前さんも着な」
促されてその部屋に入ると、和服が一色用意されていた。
『これ、どうしたんですか…?』
「他の女が着てもよかった?」
質問しても質問で返され、いつものように私が慌てることになる。

(私のため、なんだ)

熱くなる頬を隠すように部屋に入り、和服に袖を通す。
前は、着慣れていた。
彼のそういう姿も見慣れていた。
今は、和服を着る方が新鮮なはずなのに、こうして二人で袖を通すと、懐かしい記憶が一気に押し寄せる。

そればかりを振り返るわけではないけれど、何の運命のいたずらか、前世の記憶を持ったまま、こうしてまた同じ時代を生きていることは、偶然という言葉では片付けられない気がするのだ。

だけど、才蔵さんは才蔵さんらしく、
「前は前。今は今でしょ」
と言うから、私がそれを言葉にすることはほとんどない。

こうして一緒にいられるだけで、十分すぎるほど幸せけれど。
時々、ふっと感傷的になるのも正直なところだ。
そんな私の顔を、百面相と笑う才蔵さんに遅れを取らないよう、急いで草履に足を差し入れた。


出かけた先は近くの神社。
初詣にしては遅い時期で、参拝客もまばらだ。
心地よい静寂の中、二人で並んで手を合わせてお参りしたあと、数段の石段を下りたところで、才蔵さんがふと、狛犬の下で足を止める。

…400余年前の記憶が過ぎり、ちょっぴり切ない思いを抱く。
『お団子、食べますか?買ってきますよ』
屋台を見つけてそう言うと才蔵さんは、
「お前さんが作ってよ」

記憶が、“ 思い出”に変わる。
目頭に感じた熱いものを、瞬きで奥へ追いやって、

『たっくさん作りますね!』 

そうだった。才蔵さんだもの。
私が何を思ったかなんてお見通しだろう。きっといつも、思い出す記憶たちに思いを馳せている私に気づかないはずがない。

張り切る私を、少し呆れながら見て、

-ここで団子を食べなくても、とっくに恋に落ちているから-

小さな声で言ったつもりの言葉は、不思議と私の耳にはっきりと届いた。
もう一度言ってください、というお願いは、小説の一文でしょ、とはぐらかされてしまったけれど。
先に歩みを進めながらも必ず待っていてくれるその背中は、あの頃と変わらない。

護ってくれた背中に並ぶことのできる“ 今”の幸せを噛みしめながら、愛おしいその人を追いかけた。

イラスト:リコ様
(背景はフリー素材をお借りしておられるとのことです)

──終わり──


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「巡り愛」じゃない殿達が、もし巡り会ったら、そしてその先は…と考えるのが楽しくて、このところそれが頭を駆け巡ってました。
やっぱり楽しいね♪

“ 現代版”というものは、ここにおける私の原点なのかもなあと、今回改めて思いました😌