足元に咲く小さな青い花
まだ俺たちがあの時代へ飛ぶ前、○○が名前を教えてくれた
『これは、勿忘草っていうの』
「ワスレナグサ?」
『そう、名前の通り、私を忘れないで、っていう花言葉があるんだよ』
今再びその花を見つけ、それを思い出した
「なぁ…お前、幸せか?」
足元の小さな花に問いかける
幸せか、と聞くのは少し違うかもしれない
俺は“現代”にいて、○○は幕末にいるのだから…
いや、今となっては、“いた”というべきか
あの時代で生きる事を選んだ○○は、平成の世にはいるはずもないのだから…
それでも俺は、アイツのことをまだ“過去”にはできない
したくない…
目を閉じると浮かんでくるのは、アイツを見た最後の光景
俺だけが白い閃光に包まれ、視界が真っ白になっていく中で、満足そうに、でも少し寂しそうに微笑んだアイツの顔…
寂しそうに見えたのは、俺の錯覚か?
それともお前は、俺と離れるのを少しでも寂しいと思ってくれてたのか?
足元に咲く小さな花に、もう一度問いかける
「なぁ…お前、幸せだったか?」
俺はこの花を見るたびに、お前を思い出すだろう
―ワタシヲ ワスレナイデ―
なんて、本当によく言ったもんだ
でも…
いつまでも、あの時代を…お前を振り返ってばかりもいられない
わかっている
お前が残ると決めたあの時代で生きた英雄たちが作った時代に、再び俺は生きる
お前が最後まで、あの人に寄り添っていたことを願いながら…
ビルの並ぶ街の中で、空を見上げる
あの時代よりも随分と小さくなった空だ
そんな空に輝く真昼の太陽の光は、まるであの時の白い閃光のようで
その光の中、アイツの笑った顔が、くっきりと浮かんだ
―勿忘草【結城翔太】・完―
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翔太くんの短編です
困ったときの翔太くん!じゃないけど(苦笑)
自分とも向き合ってみようと思って、翔太くんの力を借りました
お話が短すぎて、端折りすぎかもしれないけど(汗)
少しずつ、ニュートラルになるように
コメントくださった皆さん、本当にありがとうございました!